池田良介

池田 良介（いけだ りょうすけ）

概要

池田良介（1887年 - 没年不詳）は、明治から昭和にかけて日本の重要な資源開発を牽引した技術者です。特に、離島や海外植民地におけるリン鉱石資源の探査と採掘事業に深く関わりました。ラサ島（現在の沖大東島）をはじめ、南洋群島や仏領インドシナなど、多くの現場で開発責任者として指揮を執り、日本のリン酸肥料産業を支えました。従四位、勲五等に叙せられています。

生涯と経歴

池田良介は、1887年（明治20年）3月、水戸の士族である池田哲太郎の長男として生まれました。代々水戸藩に仕えた家柄でしたが、明治維新後は父が農業を営んでいました。良介は1904年（明治37年）に水戸農学校を卒業後、1907年に家督を相続し、1909年（明治42年）に盛岡高等農林学校を卒業しました。徴兵検査では、体格は良かったものの第二乙種と判定されています。

リン鉱石事業への参画

1910年、盛岡高農で助教授を務めていた農学博士・恒藤規隆と出会ったことが、彼の人生を大きく変える転機となります。恒藤からラサ島でのリン鉱採掘事業の話を聞き、強い関心を持った良介は、同年11月に設立された日本産業商会への入社を決意しました。

同年11月18日、良介は第二次調査隊の一員として、当時無人島であったラサ島（沖大東島）へと向かいます。地図上の位置が実際とは大きくずれていたため、島の発見に時間を要しました。上陸後、仮設小屋や倉庫を建設し、飲料水確保のため蒸留器を設置しましたが、その量は限られており、ボウフラの湧く雨水までも集めて利用せざるを得ませんでした。この劣悪な環境下で、調査隊員全員が下痢に苦しむことになります。それでも、2週間の滞在中に多くのリン鉱石標本を採取しました。当初の計画では一部の隊員を残す予定でしたが、反対が強く、最終的には全員で引き上げることになりました。

ラサ島開発の推進

持ち帰った標本の分析の結果、ラサ島はリン鉱島として非常に有望であることが判明します。1911年（明治44年）2月、組織を改編し、資本金75万円のラサ島燐鉱合資会社が設立されました。社長となった恒藤規隆は同年4月下旬、自ら第三次調査隊を率いてラサ島へ赴き、豊富なリン鉱石を確認して歓喜しました。同年5月1日にはラサ島鉱業所が開設され、当初所長代理を務めた松岡充が東京に戻ると、良介がその後任となりました。良介は採掘や分析調査だけでなく、医療設備が不十分な中での作業員の健康管理、島内に蔓延した賭博への対処など、多岐にわたる業務をこなしました。同年12月には工学士の谷井鋼三郎が鉱業所長に就任しています。会社は1913年（大正2年）には資本金300万円のラサ島燐鉱株式会社に改組され、島にはようやく派出所が設置されました。

試練と南洋への拡大

1914年（大正3年）、良介は茨城県士族・林龍の長女さだと結婚しました。ラサ島は毎年のように台風の被害に見舞われていましたが、この年は特に甚大で、鉱業所の主要施設がほぼ壊滅しました。1916年（大正5年）春には、島内で腸チフスが大流行し、約500人の島内居住者の大半が罹患、良介自身も高熱と下痢に苦しみました。社長の恒藤は北里研究所に医師の派遣を依頼し、高野六郎が来島してワクチン接種が進められたことで、同年9月頃にようやく事態は収束しました。

同年、第一次世界大戦の結果として日本の統治領となった南洋群島へのリン鉱調査に良介は出張し、特に有望視されたアンガウル島を詳細に調査しました。当時、世界大戦による輸入の減少により、国内のリン酸肥料業界は未曽有の好景気を迎えており、1918年（大正7年）にはラサ島のリン鉱石産出量は約18万トン、鉱夫は約2000名に達し、最盛期を迎えました。1919年（大正8年）、良介は海外出張のため神戸港を出発し、セイロン島を経由してエジプトへ赴き、買鉱契約中であった紅海沿岸の鉱山を調査しています。

アンガウル島と事業の終焉

1922年（大正11年）4月、良介は南洋庁のアンガウル島初代採鉱所長として赴任し、1936年（昭和11年）末までの長期間、同島で過ごしました。1933年にアンガウル島を訪れた作家の安藤盛によれば、採掘作業員はアンガウル島の現地人ではなく、周辺のヤップ島やトラック島、ポナペ島などから3ヶ月交代で募集された出稼ぎ労働者であったといいます。単身赴任者が多かった島内では、10数海里離れたペリリュー島から小型カヌーでカナカ族の女性が訪れ、タバコや米と引き換えに特定のサービスを提供する光景も見られました。日本人職員のために、料理屋とカフェがそれぞれ一軒ずつ存在していたと記録されています。

1937年（昭和12年）、良介は新設された南洋拓殖会社に移籍し、アンガウル島に次ぐリン鉱島であるヤップ支庁のファイス島開発を担当しました。1940年（昭和15年）には南洋拓殖の子会社である印度支那燐鉱開発社の副社長に就任。仏領インドシナの東京州ラオカイ（老開）にあるリン灰石鉱山の経営に携わり、デジレー鉱区では7kmに及ぶ運搬用軌道本線を敷設するなど、数千人の人夫を投入して開発を進めましたが、その後の戦況悪化により閉山を余儀なくされ、終戦を迎えました。

戦後と晩年

1946年（昭和21年）春、ラオカイから帰国した良介でしたが、東京本郷区駒込にあった自宅は戦災で焼失していました。このため、故郷である水戸市へ戻りました。良介は狩猟や漁猟を趣味とし、特に水泳術に長け、その教本も著しています。妻さだとの間には2人の娘と4人の孫がいました。

家族・親族

母：しげ（1861年生まれ）、茨城県士族・増田敬義の二女。
妻：さだ（1894年生まれ）、茨城県士族・林龍の長女。
長女：信子（1917年生まれ）。
二女：弘子（1920年生まれ）。
弟：大金昇次郎（1888年生まれ）、大金家の養子となり鉄道局に勤務。
弟：池田静三（1893年生まれ）、慶應義塾大学卒業後、安田商事に勤務。
義弟：野村茂（1899年生まれ）、三井鉱山に勤務。

著書

『水泳術教範』川又含英堂、1911年7月。

没年は不詳ですが、日本の近代化と資源開発に尽力した技術者として、その功績は歴史に刻まれています。

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