汪叡

汪叡（おう えい）は、生没年不詳の元末明初の官僚です。字は仲魯（ちゅうろ）、号は一員（いちげん）、または蓉峰（ようほう）と称しました。本貫は徽州婺源県（きしゅう ぶげんけん）です。

生涯

元末の混乱期、汪叡は弟の汪同（おうどう）とともに人々を集めて郷里を守り、饒州（じょうしゅう）の奪回に貢献しました。その功績により、浮梁州同知（ふりょうしゅうどうち）に任じられましたが、実際に赴任することはありませんでした。

至正17年（1357年）、胡大海（こたいかい）が休寧（きゅうねい）を攻略すると、汪叡兄弟は朱元璋（しゅげんしょう）に帰順しました。婺源（ぶげん）に星源翼分院（せいげんよくぶんいん）が設置されると、弟の汪同が院判（いんぱん）に任命され、汪叡は郷里に帰りました。

至正20年（1360年）秋、汪同が兵を率いて鄱陽（はよう）で戦い、敗北して妻子を捨てて浙西（せっせい）に逃亡しました。朱元璋は汪同の裏切りを疑い、汪叡を応天府（おうてんふ）に召喚して人質としました。その後まもなく、汪同が張士誠（ちょうしせい）によって殺害されたという知らせが届くと、汪叡は安慶税令（あんけいぜいれい）に任命されました。その後、参賛川蜀軍事（さんさんせんしょくぐんじ）として召喚されましたが、病のため辞退し、官を去りました。

洪武17年（1384年）、汪叡は再び召喚され、洪武帝（こうぶてい、朱元璋）に謁見しました。その際、『書経』西伯戡黎篇（せいはくかんれいへん）の講義を命じられ、左春坊左司直（さしゅんぼうさしちょく）に任命されました。宮中の宴会では、劉三吾（りゅうさんご）・朱善（しゅぜん）とともに三老（さんろう）と称されました。また、柳公権（りゅうこうけん）の「薫風自南来（くんぷうじなんらい）」の詩に続く句を作るよう命じられ、汪叡は見事に応えて洪武帝を喜ばせました。汪叡は、春夏に死刑の執行を停止するよう進言し、これが聞き入れられました。

洪武18年（1385年）、汪叡は病のため帰休を願い出て、官を辞しました。

人物

汪叡は、元末の混乱期から明初にかけて活躍した官僚であり、その学識と才能は高く評価されました。特に詩才に優れ、宮廷での宴席ではその能力を発揮しました。また、民を思う心も持ち合わせており、死刑執行の停止を求める進言を行ったことは、その人柄をよく表しています。

参考文献

* 『明史』巻137 列伝第25

もう一度検索