1965年12月5日、
喜界島東方約70マイルの公海上で、空母タイコンデロガからB43
核爆弾を搭載したA-4E攻撃機が海に落下するという、重大な事故が発生しました。この事故は「ブロークンアロー(核兵器の紛失事故)」として知られています。
事故の経緯
事故当日、タイコンデロガではA-4E攻撃機による核兵器搭載訓練が行われていました。午後2時14分過ぎ、第2格納庫でA-4E(機体番号151022)にB43
核爆弾が搭載されました。パイロットのダグラス・ウェブスター中尉が搭乗後、機体は
飛行甲板のカタパルトへ移動するため、第2エレベーターに載せられました。
しかし、エレベーター上昇中にA-4Eが滑り始めます。乗組員が食い止めようとしましたが、機体はその場で旋回するに留まりました。ウェブスター中尉への合図もむなしく、A-4Eはエレベーター横のネットを突き破り、海へ落下しました。
事故後、
ヘリコプターが現場を捜索しましたが、ウェブスター中尉のヘルメットが見つかったのみで、A-4EはB43
核爆弾と共に水深4800メートル以上の深海に沈みました。アメリカ政府は後に、放射性物質の流出や
核爆弾爆発の恐れはないと発表しています。
事故の公表
1966年、
アメリカ原子力委員会がブロークンアローを調査中に、米海軍は議会へ事故を報告しました。しかし、日本政府への通報は行われませんでした。
1981年、米海軍は短い声明で事故を認めましたが、発生地点を「陸地から500マイル以上離れた太平洋」と説明しました。当時の日本の
外務省は
核爆弾紛失事故を認知したものの、詳細までは把握していませんでした。
1989年5月8日、アメリカ政府は本事故を公表し、
1965年に沖縄近海で
核爆弾を紛失したことを正式に認めました。この発表を受け、日本国内では大きく報道され、事故現場に近い沖縄では不安が広がりました。
また、核兵器を搭載した艦船が日本の港へ向かっていたことは、
非核三原則に反するという指摘もなされました。同年
6月2日には、喜屋武眞榮
参議院議員が本事故に関する
質問主意書を提出しています。さらに
2020年5月8日、
浜田聡参議院議員が同事故に関する日本政府の認識を再確認する
質問主意書を提出しています。
ほとんどの情報源では、紛失したB43
核爆弾は1つとされていますが、
ロスアラモス国立研究所の文書では2つである可能性が示唆されています。
関連項目
List of military nuclear accidents - Broken Arrow
1950年ブリティッシュコロンビアB-36爆撃機墜落事故
1961年ゴールズボロ空軍機事故
パロマレス米軍機墜落事故
チューレ空軍基地米軍機墜落事故
日米核持ち込み問題