1961年ゴールズボロ空軍機事故

1961年1月24日、アメリカ合衆国ノースカロライナ州ゴールズボロ近郊で、アメリカ空軍のB-52 ストラトフォートレス爆撃機が空中分解し、搭載していた2発のマーク39核爆弾が落下するという重大な事故が発生しました。

事故の経緯

事故機は、シーモア・ジョンソン空軍基地に所属するB-52G爆撃機で、北極海での24時間体制の「カバーオール」作戦に従事していました。1月23日から24日にかけての深夜、空中給油機とランデブー中に、給油機の乗組員がB-52Gの右翼に燃料漏れの穴を発見。空中給油は中止され、B-52Gは燃料を消費するため沿岸部で待機することになりました。しかし、右翼の問題は悪化し、3分間で17,000kgもの燃料が失われたため、B-52Gはゴールズボロの基地へ帰還することになります。

航空基地への着陸進入中に、機体の制御が困難となり、機長は乗組員に高度2,700メートルからの脱出を命令。5人は脱出に成功しましたが、1人が着陸時に死亡、2人が衝突によって命を落としました。第三操縦士のみが射出座席を使用せずに脱出に成功しています。最終的に乗組員全員が機体から離れ、残骸はゴールズボロの北約20kmにあるタバコ農園と綿花畑に散乱しました。

核爆弾の落下と発見

2発のマーク39核爆弾は、高度610〜3,000mの間で機体から脱落しました。1発目の爆弾は、4つの起爆装置のうち3つが作動し、起爆に必要な手順の多くが実行に移されていました。しかし、地表付近で落下傘が開き、衝撃が緩和されたことで爆発は免れました。爆弾は落下傘が木に引っかかった状態で発見されました。

爆弾処理の専門家であるJack ReVelleは、起爆シーケンスは完了していたものの、安全装置が作動していたと証言。国防総省は当時、2つの起爆装置が作動していなかったため爆発の可能性はないと発表しました。しかし、軍事評論家のDaniel Ellsbergは、安全装置は爆発を防ぐための複数の装置の一つに過ぎないと指摘。2013年に公開された情報でも、爆発が防がれたのは1つのスイッチによるものだったことが確認されました。

2発目の爆弾は、秒速310mで泥に突っ込み、爆弾の尾部が地下6.1mの地点で発見されました。爆弾の各部は回収されましたが、地表水の水位が制御できず、発掘作業は断念。ウランを含む水爆の大部分は現地に埋められたままとなり、アメリカ陸軍工兵司令部が残骸を含む地域を購入しました。ノースカロライナ大学チャペルヒル校の調査によると、爆弾の残骸は深さ55mの地点に埋まっているとされています。

核爆発の危機

2011年、Lt. ReVelleは、爆弾が爆発寸前であったことについて「ノースカロライナを『ノースカロライナ湾』に変えてしまうところだった」と語りました。彼は、それぞれの爆弾が広島型原爆の250倍以上の破壊力を持っていたと指摘し、半径27.4kmの範囲を100%殺傷するだけの威力があったと述べています。2発の爆弾は、過去の核実験以外の全ての爆発を合わせたものよりも大きな破壊力を持っていた可能性があったとされています。

2013年、調査ジャーナリストのエリック・シュローサーは、機密文書を公開し、その中でサンディア国立研究所のParker F. Jonesが「ゴールズボロを再検証」と題した報告書で、単純な低電圧スイッチが破滅を食い止めたと述べました。彼は、この爆弾（マーク39 Mod2）のために、B-52の常時滞空任務は十分に安全ではなかったと結論付けています。

事故のその後

2012年6月、ノースカロライナ州は事故現場から4.8km北の地点を歴史的地点として選出し、「Nuclear Mishap（核事故）」と題して記念碑を設置しました。

結論

ゴールズボロ空軍機事故は、核兵器がもたらす潜在的な危険性を浮き彫りにし、核兵器の安全管理における重要な教訓となりました。この事故は、核兵器の安全性を確保するための厳格な対策の必要性を改めて示すものとなりました。

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