パロマレス米軍機墜落事故

パロマレス米軍機墜落事故

1966年1月17日、スペイン南部上空で発生したパロマレス米軍機墜落事故は、冷戦下のクロームドーム作戦中に起きた悲劇です。アメリカ空軍のB-52G爆撃機とKC-135A空中給油機が、地中海の上空3万1千フィートで空中給油中に衝突し墜落しました。この事故により、B-52Gが搭載していた4発の水素爆弾（B28RI）が、アンダルシア州アルメリア県クエバス・デル・アルマンソーラのパロマレス集落周辺に落下するという事態になりました。

墜落したKC-135Aの乗員4名は全員が命を落としました。一方、B-52Gの乗員は4名が脱出に成功しました。落下した4発の水素爆弾のうち、3発はパロマレス近くの地上に落下し、残りの1発は海中に没しました。

地上に落下した爆弾のうち、1発はほぼ無傷で発見されました。しかし、残りの2発は核爆発こそ免れたものの、起爆用の通常火薬が爆発したため、ウランとプルトニウムが広範囲に飛散し、約2km²の土地が汚染される結果となりました。これは「汚い爆弾」とほぼ同じ状態でした。米軍は汚染された1750トンの土壌を除去し、サウスカロライナ州のサヴァンナ川核施設へ輸送しましたが、2011年時点でも30ヘクタール、5万m³の土地に500gのプルトニウムが残存しているとされています。

事故直後、スペインの情報観光大臣マヌエル・フラガと在スペインアメリカ大使のアンジー・デュークは、事態の安全性をアピールするため、記者たちの前で海に入って泳ぐというパフォーマンスを行いました。これは、実際には2度実施され、最初はモハカルのビーチ、2度目はパロマレスのビーチで行われました。

海に落下した水素爆弾は、米海軍による大規模な捜索活動の末、80日後の3月17日に深海探査艇アルビン号によって発見され、潜水艦救難艦ペトレルによって引き上げられました。このサルベージ作業中には、海軍のダイバー、カール・ブラシアが重傷を負い、後に足を切断することになります。この事故は、2000年にキューバ・グッディング・ジュニア主演の映画『ザ・ダイバー』の題材となりました。

事故後のパロマレス

事故後、パロマレス周辺の住民は農業を続けていましたが、2004年にスペイン政府は汚染地域の一部2ヘクタールを買収し、2007年までにフェンスで封鎖しました。政府のエネルギー・環境技術センター（CIEMAT）は、大気中の放射線レベルは国際基準を下回っており、住民の健康には影響がないと発表しています。しかし、環境保護団体は政府の安全基準を超える放射線が検出されたと主張しており、2006年には実際にカタツムリから通常より高い放射線レベルが検出されています。

スペイン政府は、米国と汚染地域の回復策と費用負担について協議を続けています。2006年から2008年にかけて行われた調査では、660ヘクタールの地域を調査した結果、30ヘクタールで規制値を超えるプルトニウムが検出されました。場所によっては深さ5mまで汚染が及んでいたため、41ヘクタールが鉄柵で囲まれることになりました。

現在、スペイン南部の海岸はヨーロッパからの観光客で賑わっており、パロマレスでも外国人向けの別荘地が開発されています。しかし、住民は風評被害を懸念しており、クエバス・デル・アルマンソーラの市長は、政府に対して公式な安全宣言を出すよう求めています。

関連作品

この事故を題材とした作品として、ケイ・シセリスによる小説『魚が出てきた日』、逢坂剛による小説『燃える地の果てに』、松竹による特撮映画『昆虫大戦争』などが存在します。

参照資料

沢村亙「水爆落下の村 戸惑い - 米軍機事故から41年 スペインで本格調査」朝日新聞2007年8月23日13版9面
三井美奈「放射能45年後も脅威　開発進むリゾート地」読売新聞　2011年7月12日

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