没食子酸

没食子酸（もっしょくしさん、gallic acid）は、芳香族カルボン酸の一種で、別名3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸とも呼ばれます。白色の吸湿性結晶であり、昇華点は210℃です。加熱すると脱炭酸反応を起こし、ピロガロールを生成します。1818年にフランスの薬学者アンリ・ブラコノーによって発見され、その後、テオフィル＝ジュール・ペルーズによって研究が進められました。

概要

没食子酸は、五倍子（ヌルデの虫こぶ）、没食子（中近東のブナ・カシワの虫こぶ）、マンサク科の植物ハマメリス（Witch-hazel）、茶の葉、オークの樹皮など、自然界の多くの植物に含まれています。特に、加水分解性タンニンの基本骨格を構成する重要な成分として知られています。

用途

没食子酸は、その化学的特性から様々な用途に利用されています。

還元剤： アルカリ性水溶液中では強い還元力を示し、還元剤として利用されます。
写真の現像剤： 写真フィルムの現像プロセスにおいて、現像剤として機能します。
タンニン合成の原料： タンニンを合成するための原料として使用されます。
没食子インクの製造： 伝統的な青インクである没食子インクの製造に用いられてきました。
酸化防止剤： 没食子酸プロピルや没食子酸イソアミルなどのエステルは、油脂やバターの酸化を防止する目的で添加されます。
エピガロカテキンガレートの構成成分： カテキンの一種であるエピガロカテキンガレートは、没食子酸のエステルです。

このように、没食子酸は、自然界に広く分布し、多様な産業分野で利用されている重要な化合物です。

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