沢山遼

沢山 遼（さわやま りょう）は、1982年に岡山県で生まれた日本の美術批評家です。彼は、現代美術の批評、研究、教育といった多角的な視点から活動を展開しています。

美術を学ぶため武蔵野美術大学に進学し、その大学院造形研究科にて修士課程を修了しました。ここで培った造形や美術理論に関する深い知見が、その後の批評活動の基盤となっています。

批評家としての彼のキャリアは、2009年に重要な一歩を踏み出しました。この年、『美術手帖』が主催する第14回芸術評論募集において、彼の論考「レイバー・ワーク──カール・アンドレにおける制作の概念」が見事第一席に選ばれました。この受賞は、ミニマル・アートの巨匠カール・アンドレの作品における「制作」という行為に光を当て、批評家としての鋭い洞察力と分析力を示すものとなりました。

その後、自身の研究領域をさらに深化させるため、2020年度には文化庁の新進芸術家海外研修制度（長期研修）に選ばれ、アメリカ・ニューヨークに滞在し研鑽を積みました。この海外での経験は、国際的な視点から美術を捉える上での貴重な財産となったと考えられます。また、批評文化の振興にも積極的に関与しており、2023年度には文化庁が推進するアートクリティック事業のディレクターを務めるなど、美術を取り巻く環境整備にも貢献しています。

教育者としても熱心な活動を行っており、かつては造形大学にて絵画専攻領域の特任准教授として教鞭をとっていました。そして、2024年4月からは、母校である武蔵野美術大学の美学美術史研究室に准教授として着任し、次世代の批評家や美術研究者の育成にあたっています。

これまでの研究成果は、様々な形式で発表されています。単著としては、2020年に書肆侃侃房から刊行された『絵画の力学』があります。この書籍は、絵画というメディアが持つ根源的な「力学」に迫り、その今日的な意味を問い直す試みとして高く評価されています。また、共著にも多数参加しており、2017年の田中正之編著『現代アート10講』（武蔵野美術大学出版局）、2016年の松浦寿夫ほかによる『絵画との契約―山田正亮再考』（水声社）に寄稿しています。さらに、2023年に国立新美術館が編纂した『今、絵画について考える』（水声社）にも論考を寄せています。

展覧会カタログや学術誌への論考寄稿も多数行っており、例えば、2018年の東京国立近代美術館『ゴードン・マッタ＝クラーク展』カタログには「都市の否定的なものたち ニューヨーク、東京、1972年」を、同年刊行の『NACT Review 国立新美術館研究紀要』第4号には「ウォーホルと時間」を発表しました。2017年には田中正之編著の書籍『ニューヨーク　錯乱する都市の夢と現実（西洋近代の都市と芸術７）』（竹林舎）に「ニューマンのパラドクス」を寄稿するなど、特定の作家やテーマに深く切り込んだ分析を展開しています。

より広い層への美術批評の発信にも取り組み、2023年からは美術家である渡辺泰子氏や石川卓磨氏らとともに、ポッドキャスト番組「日々美術」の配信にも参加しています。日常的な視点から美術について語り合うこの試みは、美術鑑賞の間口を広げるものとなっています。

専門家組織としては、国際的に活動する美術評論家のための団体である国際美術評論家連盟（AICA）の日本支部会員でもあります。このように、沢山の活動は、アカデミックな研究から一般向けのメディア発信まで多岐にわたり、現代美術批評の分野において重要な役割を担っています。今後の研究、批評、教育活動にも注目が集まっています。

関連人物として岡崎乾二郎氏が挙げられます。

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