河内卓司

河内 卓司（こうち たくじ）

河内卓司は、1920年4月26日に広島県広島市で生まれたプロ野球選手で、ポジションは三塁手です。彼は1943年、旧制広島一中（現在の広島国泰寺高校）から慶應義塾大学へ進学し、遊撃手としてその才能を発揮しました。特に、同年10月16日に行われた早慶戦では八番遊撃手として出場し、学徒出陣壮行を経験しました。しかし、その後、激化する太平洋戦争により大日本帝国陸軍に入隊。広島の野砲兵第五連隊・西部第五部隊で中尉として台湾で終戦を迎えました。

戦後、彼は慶應野球部に復帰し、1946年春には戦後初の東京六大学リーグ戦で優勝を果たします。この時の成績は、14試合出場、39打数7安打、打率.179といったものでした。1947年には大洋漁業に入社し、野球部で四番遊撃手として貢献し、第20回都市対抗野球大会においてチームの初出場をやり遂げました。

1949年、プロ野球のリーグが拡張され、河内は毎日オリオンズに入団。彼はすでに30代半ばでしたが、全試合に出場し、リーグ最多打数と打席数を記録。特に、パ・リーグの初代王者としての成功に大きく寄与しました。彼は第1回日本シリーズで初めて打席に立ち、サヨナラ勝ちの瞬間にはホームを踏む選手となりました。さらに、147安打はその年のルーキー最多打数として記録されていますが、失策59と盗塁死16もリーグトップという厳しい成績を持っています。

1952年には、多くの記録的な瞬間を生み出します。8月16日、大映スターズとの試合で、彼は1イニングで3盗塁を決めるプロ野球記録を樹立しました。また、6月29日には、一試合で2度トリプルプレーを喫するという珍しい場面にも直面しました。オリオンズでは4番打者としても活躍し、主将も務めました。

その後、1954年に発足した高橋ユニオンズに移籍し、初年度から一番打者としての役割を果たしました。この年のオールスターゲームにはユニオンズから唯一の選手として出場し、以降も多くの試合で安定した打撃を見せましたが、1957年には合併により大映ユニオンズに移籍し、その年に現役を引退します。

引退後は、社会人野球のリッカーミシンの監督を務めたり、日比谷コンピュータシステムでシステム営業部長を歴任しました。進学校を出身としていたためか、広島での知名度はそれほど高くなく、帰郷して行ったソフトボール大会では誰からも気づかれなかったエピソードも残っています。

河内卓司は、2016年6月8日、96歳でその生涯を閉じました。彼の野球人生は、多くの記録と共に今も多くのファンの心に刻まれています。

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