河内町 (広島県)

かつて広島県の中央部に位置し、賀茂郡に属していた河内町（こうちちょう）は、2005年2月7日をもってその歴史に幕を下ろしました。この日、同じ賀茂郡の黒瀬町、豊栄町、福富町、そして豊田郡安芸津町とともに東広島市へ編入されたことによるものです。

地理

河内町は、町の中央部を流れる沼田川と、その支流である椋梨川が豊かな水資源をもたらしていました。また、周囲には標高500mを超える山々がそびえ、変化に富んだ地形を形成していました。主な山としては、嶽ヶ城（556.2m）、竜王山（549.3m）、篁山（たかむらやま、535m）、岩谷山（505.4m）、義庵坊（496.2m）などがあります。

編入直前の2005年2月6日時点では、宇山、小田、上河内、河戸、下河内、戸野、中河内、入野の八つの大字から構成されていました。

歴史

「河内」という町名は、町の中心部に位置する大字の名に由来するとされています。その行政区域の歴史は、1889年4月1日の町村制施行に遡ります。当時、現在の河内町にあたる地域には、いずれも豊田郡に属する大河村、戸野村、豊田村、入野村が存在していました。

1924年4月1日には、豊田郡大河村が名称を改めて町制を施行し、初代の豊田郡河内町が誕生します。その後、地域の再編が進み、1950年6月10日には戸野村の一部が賀茂郡造賀村へ編入される出来事もありました。

大規模な合併が行われたのは1955年3月31日です。初代の豊田郡河内町、豊田郡戸野村の全域、そして豊田郡豊田村の一部が合併し、新たな豊田郡河内町（2代）が成立しました。なお、この時、豊田郡豊田村の残りの地域は同日付で賀茂郡大和町（現在の三原市の一部）に編入されています。

郡の所属変更もありました。1956年4月1日、豊田郡河内町と豊田郡入野村は、所属郡が豊田郡から賀茂郡へと変更されます。続いて、1956年9月30日には、賀茂郡入野村が河内町に編入され、現在の町域に近い形が整いました。

その後も境界の調整は続き、1958年には戸野地区の一部が賀茂郡福富町に割譲され、逆に福富町の一部を編入するなどの変更がありました。さらに1974年8月1日には、小田地区の一部を賀茂郡大和町に割譲し、大和町の一部を編入するといった細かな境界変更が行われています。

そして、2005年2月7日、河内町は周辺の自治体とともに東広島市に編入され、80年以上にわたる町としての歴史に終止符を打ちました。

特筆すべき出来事として、1931年1月12日には河内駅付近で急行列車が脱線転覆する事故が発生し、多くの死傷者を出しましたが、町内の人々が救助活動に尽力しました。また、2001年3月24日には芸予地震が発生し、町内で震度6弱の強い揺れを観測しています。

教育

廃止時点では、町内には河内町立河内小学校、河内町立河内西小学校、河内町立入野小学校の三つの小学校と、河内町立河内中学校がありました。また、広島県立河内高等学校も設置されており、1968年から1974年までの期間は、広島県内で唯一の町立高等学校（河内町立河内高等学校）としての歴史も持っていました。

交通

鉄道はJR山陽本線が町の主要な交通機関であり、河内駅と入野駅が町民の足となっていました。山陽新幹線も町の南端を通過していましたが、町域内は全て入野トンネルで通過しており、駅は設置されていませんでした。

道路網としては、山陽自動車道の河内インターチェンジが設けられており、特に広島方面から広島空港へのアクセスポイントとして重要な役割を担っていました。その他、国道432号を始め、広島県道33号瀬野川福富本郷線、広島県道59号東広島本郷忠海線、広島空港へのアクセスを支える広島県道73号広島空港線といった主要地方道や、複数の一般県道が地域を結んでいました。

名所・旧跡・観光地

町内には、静寂な佇まいの竹林寺、人造湖でありながら美しい景観を持つ白竜湖、そして自然豊かな渓谷である深山峡といった名所や観光地が存在しました。

主要施設

公共施設や産業関連施設としては、治水利水に貢献する椋梨ダム、レジャー施設である安芸カントリークラブ、畜産研究を行う国の機関である家畜改良センター中国牧場などがありました。

出身者

河内町ゆかりの人物としては、医師であり政治家としても活躍された大原博夫氏がいます。広島県医師会長、衆議院議員を経て、広島県知事を務めるなど、地域の発展に貢献しました。

河内町は、その歴史の中で度重なる行政区画の変更を経て現在の東広島市の一部となり、かつての豊かな自然と交通の要衝としての特徴は、新たな町の活力となっています。

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