河本真理

河本 真理

河本 真理（こうもと まり）氏は、1968年3月24日に東京都に生まれた日本の美術史学者です。現在、日本女子大学の教授として教鞭を執りながら、主に西洋美術史を専門として研究活動を行っています。

経歴

河本氏の学術的なキャリアは、東京大学文学部美術史学科を卒業したことから始まります。学部での専門的な学びを深めた後、さらに高度な研究を目指し、同大学の大学院人文社会系研究科に進学しました。そこで博士課程において所定の単位を修得し、満期退学という形で一旦学業を終えました。

その後、研究の場を海外に移し、フランスのパリ第1大学で美術史学の博士号を取得するなど、国際的な視野を広げ、深い専門性を磨きました。このパリでの研究経験は、その後の活動に大きな影響を与えたと考えられます。

日本に帰国後、アカデミックな職歴を開始します。2006年には京都造形芸術大学比較藝術学研究センターの助教授に就任しました。翌2007年には同センターの准教授に昇任し、教育者および研究者としてのキャリアを確立していきます。2009年には、広島大学総合科学部の准教授として活躍の場を移しました。そして2014年からは、現在の所属である日本女子大学人間文化学部の教授として、後進の指導にあたるとともに、自身の研究活動を精力的に続けています。

研究業績と受賞

河本氏の専門とする西洋美術史の中でも、特に20世紀の芸術に深い関心を寄せ、数々の重要な研究成果を発表しています。中でも特筆すべきは、コラージュという表現技法に関する研究です。コラージュが単なる技法にとどまらず、20世紀という激動の時代の美学や思想をどのように反映しているのかを歴史的にたどり、その意義を深く考察しています。

このコラージュ研究の集大成ともいえる著書『切断の時代 20世紀におけるコラージュの美学と歴史』（ブリュッケ）は、2007年に刊行され、美術史学界内外から高く評価されました。この功績により、同年には権威あるサントリー学芸賞（芸術・文学部門）と、渋沢クローデル賞特別賞という二つの賞を同時に受賞するという快挙を達成しています。これは、河本氏の研究が学術的に極めて重要な貢献を果たしたことの証と言えるでしょう。

また、河本氏は第一次世界大戦が芸術にもたらした影響についても研究を進めています。戦禍の中で芸術家たちが直面した現実や、それに対する応答として生まれた新たな芸術表現について、多角的な視点から分析を行っています。

著書

河本氏の主な著書には以下のものがあります。

『切断の時代 20世紀におけるコラージュの美学と歴史』ブリュッケ, 2007年
『葛藤する形態 第一次世界大戦と美術』人文書院（レクチャー第一次世界大戦を考える）, 2011年

これらの著作は、20世紀美術、特に近代化や戦争といった社会状況と芸術表現との関わりを理解する上で、重要な文献となっています。

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