河野常吉

河野常吉（こうの つねきち）

河野常吉（1863年1月11日 - 1930年9月3日）は、明治・大正期に活躍した北海道史研究者です。信濃国安曇郡（現在の長野県松本市）に生まれ、北海道の開拓と発展に深く関わりました。実弟に河野齢蔵、子にアイヌ研究者の河野広道、孫に河野本道がいます。

生涯

河野常吉は、長野県師範学校松本支校を卒業後、慶應義塾で学びました。その後、秋田県の鉱山での職を経て、郷里で養蚕業に従事し、自由民権運動にも関わりました。長野県庁や東京中央気象台での勤務を通じて、人文・自然科学の幅広い知識を習得しました。

1894年（明治27年）に北海道へ移住し、北海道庁の嘱託として拓殖行政に携わりました。彼は、北海道の殖民状況を詳細に調査し、報告書を作成することで、その後の北海道開発に大きく貢献しました。

業績

河野常吉の主な業績は、北海道の拓殖状況に関する詳細な調査と報告書の作成です。1898年から1901年にかけて、根室国、日高国、釧路国、十勝国、北見国の各国について『北海道殖民状況報文』をまとめました。これらの報告書は、当時の北海道の自然条件や地域の歴史、拓殖の状況を詳細に記録した貴重な資料となっています。

また、『北海道拓殖要覧』、『第二拓地殖民要録』、『道治一斑』、『北海道殖民の進歩』、『北海道旧土人』、『函館区史』など、北海道庁の拓殖事業に関する刊行物の編纂にも携わりました。彼は、日本原住民コロボックル説を批判する立場から学界論争に参加し、史学、考古学、アイヌ研究の分野でも大きな影響力を持っていました。

開道50年記念事業の北海道史編纂事業では編纂主任を務めました。この時、アイヌとして小学校教師をしていた武隈徳三郎を知り、その著書『アイヌ物語』の序文と校訂を担当し、出版に尽力しました。

晩年は、北海道史跡名勝記念物調査委員や小樽市立図書館長を務め、『小樽市史』や『室蘭市史』の編纂にも関わりました。彼の業績は、実証的かつ体系的な歴史叙述によって高く評価されており、優れた道史研究の後継者を育成したことも重要な貢献です。

著書

『北海百人一首』(1906年)
『非コロポックル論』(1908年)
『大雪山及石狩川上流探検開発史』(1926年)
『物語北海道史』明治時代編(1978年)
『河野常吉ノート』考古篇(1981年、1983年)
『『啓明会』往復書翰』(1984年)
『留萌市海のふるさと館「郷土史料集」』第2輯(1996年)

参考文献

石村義典『評伝河野常吉』北海道出版企画センター、1998年。

河野常吉は、北海道の歴史と文化に多大な貢献をした偉大な研究者であり、彼の業績は今日でも高く評価されています。

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