沿志奏逢

Bank Band『沿志奏逢』：音楽と社会貢献の融合

『沿志奏逢』（そうしそうあい）は、Bank Bandが2004年に発表した初のカバーアルバムです。このアルバムは、単なるカバー集ではなく、ap bankの活動理念を音楽を通して表現するという、特別な意味を持っています。30万枚限定で発売された本作は、現在では入手困難となっていますが、2018年からはダウンロードやサブスクリプションサービスでも配信され、多くの人が気軽に聴けるようになりました。

制作の背景

2003年、小林武史と櫻井和寿を中心に非営利組織「ap bank」が設立されました。その翌年、ap bankの活動や理念を音楽で伝えたいという思いから、東京・六本木でライブ『BGM 〜Bank with Gift of Music for AP BANK』が開催されました。ライブ自体は赤字だったものの、その手応えから、バンドメンバーが集まりレコーディングが行われ、Bank BandとしてCDをリリースすることになったのです。

音楽性と選曲

アルバムの収録曲は、櫻井和寿が選曲した日本のミュージシャンのカバー曲を中心に構成されています。選曲にあたり櫻井は、単に好きな曲を選ぶのではなく、楽曲に込められたメッセージを大切にし、演奏を通してそれを伝えようとしました。また、Mr.Childrenの楽曲のセルフカバーも収録されており、新たな魅力を引き出しています。

小林武史は、過去の楽曲をカバーすることについて、「自分達のごく身近にあった過去の楽曲のなかのメッセージを紡いでいくことで、新しいメッセージを作ることに意義がある」と語っています。この言葉は、本作が単なる懐古主義的なカバーアルバムではなく、過去の音楽遺産を現代に蘇らせ、新たな価値を創造しようとする試みであることを示しています。

タイトルに込められた意味

アルバムタイトル『沿志奏逢』は、「志に沿い、出逢いを奏でる」という意味が込められています。櫻井和寿は、「相思相愛」という言葉を元にこのタイトルを考案し、自身が影響を受けてきたアーティストの志を引き継ぎ、そのアーティストを知らない世代とも繋がりたいという思いを表現しました。

リリースとプロモーション

本作は限定生産盤のみで発売され、紙ジャケット仕様となっています。CD EXTRAには、櫻井和寿からのメッセージが収録されています。また、本作の収益はap bankの活動資金として活用されています。30万枚という限定数は、営利目的ではなく、ap bankの運営に必要な資金を確保するためのものでした。

シークレットトラック

アルバムには、2種類の楽曲のうちどちらか1曲が収録されたシークレットトラックが収録されています。どの曲が収録されているかは、CDを聴くまで分からないという仕掛けが施されています。

収録されている可能性がある楽曲は、浜田省吾の「僕と彼女と週末に」と吉田拓郎の「イメージの詩」のいずれかです。CDの収録時間や、ジャケットの品番表記などから、どちらの曲が収録されているかを判別する方法も存在します。ただし、配信版にはシークレットトラックは収録されていません。

アートワーク

アートディレクターは佐藤可士和が担当し、ジャケットにはキュウリが描かれています。これは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの1stアルバムのジャケットに描かれたバナナのパロディであり、小林武史が家庭菜園で収穫したキュウリがモチーフとなっています。

収録曲

アルバムには、中島みゆき、岡村靖幸、ヒートウェイヴ、大貫妙子、井上陽水、浜田省吾、さねよしいさ子、遠藤賢司といった、日本の音楽史を彩るアーティストたちの楽曲がカバーされています。これらの楽曲は、櫻井和寿の感性を通して新たな解釈が加えられ、Bank Bandならではのサウンドで生まれ変わっています。

Mr.Childrenの楽曲「HERO」と「優しい歌」のセルフカバーも収録されており、Bank Bandのアレンジによって、原曲とは異なる魅力を放っています。

まとめ

『沿志奏逢』は、Bank Bandの音楽性とap bankの理念が融合した、意義深い作品です。櫻井和寿の選曲センス、小林武史のアレンジ、そしてBank Bandの演奏力によって、世代を超えて愛される名曲たちが新たな輝きを放っています。このアルバムは、音楽の力で社会を良くしようという、Bank Bandの熱い思いが込められた作品と言えるでしょう。

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