泉万里

泉万里氏は、1957年生まれの日本美術史学者であり、大和文華館の元学芸部長としても知られています。彼女の研究は、特に中世の日本美術、中でも着色画屏風に焦点を当て、その美術史的意義を深く掘り下げています。

泉氏は1980年に東北大学文学部を卒業後、出版社勤務を経て、1986年に大阪大学大学院美学科に入学。1992年に博士課程を満期退学しました。その後、大阪大学文学部の助手、神戸市看護大学助教授、大阪大学総合学術博物館助教授を経て、2007年に教授に就任。2014年からは静岡県立美術館の学芸部長を務め、2017年より大和文華館学芸部長となりました。

泉氏の研究は、中世の屏風絵というテーマを通して、当時の社会や文化、美意識を読み解くものです。彼女の博士論文である「中世着色画屏風の研究　東京国立博物館所蔵「浜松図屏風」を中心に」は、この分野における重要な貢献と評価されています。

著書には、『扇のなかの中世都市 光円寺所蔵「月次風俗図扇面流し屏風』(2006年)、『光をまとう中世絵画 やまと絵屏風の美』(2007年)、『武家屋敷の春と秋 萬徳寺所蔵「武家邸内図屏風」』(2007年)、そして『中世屏風絵の研究』(2013年)などがあります。これらの著作を通して、泉氏は屏風絵という媒体を通じて、中世の人々の生活や美意識、文化的な背景を鮮やかに描き出しています。

特に『光をまとう中世絵画 やまと絵屏風の美』では、やまと絵屏風の持つ独特の美しさに焦点を当て、その歴史的、文化的な背景を解説しています。また、『武家屋敷の春と秋 萬徳寺所蔵「武家邸内図屏風」』では、屏風絵に描かれた武家屋敷の様子から、当時の武士の生活や文化を垣間見ることができます。

泉万里氏の研究は、単に美術品の歴史を追うだけでなく、その背後にある社会や文化、人々の想いを深く理解しようとする姿勢に貫かれています。彼女の著作は、美術史研究者だけでなく、広く日本文化に関心を持つ人々にとって貴重な資料となっています。

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