泉沢寺

泉澤寺（せんたくじ）

泉澤寺は、神奈川県川崎市中原区にある浄土宗の寺院です。その歴史は15世紀末に遡り、地域の歴史と文化を今に伝える重要な場所となっています。

歴史

1491年（延徳3年）、泉澤寺は吉良氏によって創建されました。当初は武蔵国多摩郡烏山村（現在の東京都世田谷区烏山）に位置していましたが、1550年（天文19年）に領主であった吉良頼康によって現在の場所に移転されました。吉良氏は、この寺を自らの菩提寺として大切にしてきました。

江戸時代に入ると、泉澤寺は上田元俊を初代とする旗本上田家の菩提寺としての役割も担うようになりました。これにより、寺は地域の有力者からの庇護を受け、発展を遂げました。

移転の際、吉良頼康は上丸子山王社に釈迦如来像を奉納し、自らの武運長久を祈願したと伝えられています。この釈迦如来像は、現在では上丸子山王社の旧別当寺である大楽院に移されています。この逸話は、当時の武将が寺社をどのように利用し、信仰を深めていたかを物語っています。

また、泉澤寺の前を通る県道45号線は、かつての中原街道でした。中原街道は東海道の脇街道として重要な役割を果たし、交通の要所として賑わっていました。大正時代までは、寺の門前で市が立ち、地域の人々の生活と密接に結びついていたことが伺えます。

文化財

泉澤寺は、多くの文化財を所蔵しており、その歴史的価値が認められています。

泉澤寺文書（川崎市重要歴史記念物）： 昭和39年10月20日に指定されたこの文書は、寺の歴史や地域の出来事を記録した貴重な資料です。
銅造阿弥陀如来立像（川崎市重要歴史記念物）： 昭和61年8月28日に指定されたこの仏像は、精巧な造りで、当時の仏像制作技術の高さを物語っています。
木造四天立像（川崎市重要歴史記念物）： 同じく昭和61年8月28日に指定されたこの像は、仏教における四天王を表現したもので、寺の守護としての役割を担っています。
泉澤寺本堂（川崎市重要歴史記念物）： 平成8年1月25日に指定された本堂は、歴史的な建築様式を今に伝える貴重な建造物です。

これらの文化財は、泉澤寺が歴史的に重要な役割を果たしてきた証であり、地域住民にとって大切な宝です。

交通アクセス

泉澤寺は、JR南武線の武蔵中原駅から徒歩約10分の場所に位置しています。アクセスも良好で、多くの人々が訪れやすい環境です。

まとめ

泉澤寺は、その長い歴史の中で、地域の人々の信仰の中心として、また文化的な拠点として重要な役割を果たしてきました。数々の文化財は、その歴史的価値を物語り、訪れる人々に深い感動を与えます。現在も地域に根ざした寺院として、多くの人々に親しまれています。

参考文献

神奈川県高等学校教科研究会社会科部会歴史分科会 編『神奈川県の歴史散歩 上（歴史散歩14） 川崎・横浜・北相模・三浦半島』山川出版社、2005年
「上小田中村」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ65橘樹郡ノ8、内務省地理局、1884年6月。NDLJP:763984/33。

もう一度検索