泉田町 (刈谷市)

愛知県刈谷市 泉田町

愛知県刈谷市に属する町名である泉田町（いずみだちょう）は、市域の東部に位置し、境川と逢妻川という二つの河川に挟まれた洪積台地上に広がっています。行政上は丁番を持たない単独町名として定められており、内部には29の小字が存在します。郵便番号は448-0004が割り当てられています。

地勢

町の地形的な特徴として、周囲を流れる境川と逢妻川によって形成された台地の上に位置することが挙げられます。この地理的な条件は、古来からの土地利用や集落の発展に影響を与えてきました。

歴史

泉田の地には、旧石器時代にさかのぼる可能性も示唆されるほど、古くから人々が暮らしていた痕跡が見られます。縄文時代から室町時代にかけての複合遺跡である泉田古墳群や、平安時代から鎌倉時代にかけての窯跡群である泉田古窯群が発見されており、古代における当地の重要性を示唆しています。中世には「和泉田村」という表記も史料に見られます。

戦国時代においては、地元の武将である矢田作十郎が泉田を拠点としていたとの伝承があり、永禄6年（1563年）に発生した三河一向一揆では一揆方につき、徳川家康と対立した歴史も持ちます。この戦国期の記憶は、現在も絵下城（えげじろ）をはじめ、上の門、下市場、市場屋敷といった旧来の地名として地域に残されています。

江戸時代に入ると、泉田村は刈谷藩の領地となり、東海道の宿場町である池鯉鮒宿（ちりゅうしゅく）の助郷村（すけごうむら）としての役割も担いました。近世の初めには、泉田村の枝郷（出郷）として今川村が存在しましたが、享保16年（1731年）には独立した村として分村しています。また、東海道に設けられていた一里塚の一つが存在した一里山も、かつては泉田村の枝郷でした。天保3年（1833年）の記録によれば、村の戸数は318戸、人口は1,264人であったとされています。

台地上の泉田村は、歴史的に水利に乏しい土地柄であり、特に水田の開墾は容易ではありませんでした。本格的に水田開発が進んだのは、大正時代に金山揚水（かなやまようすい）が整備され、安定した水の供給が可能になってからのことです。

近代以降、泉田村は度重なる行政区画の変更を経験しました。1878年（明治11年）には、泉田村、今川村、今岡村が合併して逢見村（おうみむら）が発足。その後、1889年（明治22年）の町村制施行により改めて逢見村となりました。1906年（明治39年）には、逢見村が一ツ木村、境村、東境村と合併し、新たに富士松村（ふじまつむら）が誕生します。さらに戦後、1955年（昭和30年）に富士松村が刈谷市に編入合併された際、泉田の地域は刈谷市の大字逢見の一部として扱われることになりました。しかし、その後の区画整理を経て、1970年（昭和45年）には大字逢見が泉田町、今川町、今岡町などに分割され、「泉田」という地名が再び町名として復活を果たしました。

主な施設と名所旧跡

地域には、住民の生活を支える施設として、泉田市民館や刈谷泉田簡易郵便局などがあります。また、総合建設会社である角文株式会社の本社も泉田町に位置しています。

歴史的な名所旧跡としては、八王子神社の境内に横穴式石室の一部が移築・保存されている泉田古墳や、弥生時代の貝塚として刈谷市指定史跡（1958年指定）となっている八王子神社貝塚があります。八王子神社は村社として地域で崇敬を集めており、この八王子神社の社殿は貝塚の上に建立されています。その他、真宗大谷派の寺院である順慶寺、浄信寺、西念寺といった仏閣も点在しており、地域の歴史や文化を今に伝えています。

※ 市立小・中学校への通学については、地域ごとに学区が定められています。

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