泉都

別府市の地域通貨「泉都」：温泉都市の活性化を支える独自の経済圏

大分県別府市は、数多くの温泉が湧き出る、日本有数の温泉都市として知られています。その別府市で独自に発行されている地域通貨が「泉都（せんと）」です。単なる地域通貨にとどまらず、市民生活や地域経済に深く根ざした、別府市の活性化に貢献する重要な役割を担っています。本稿では、「泉都」の概要、利用方法、歴史、そして別府市における地域通貨の意義について解説します。

「泉都」の概要：温泉卵キャラクターが可愛らしい地域通貨

「泉都」は、別府市の地域再生計画の一環として発行された地域通貨です。当初は住民基本台帳カードと連携したICカード型の地域通貨としてスタートしましたが、現在は紙の「泉都券」が中心となっています。名称は「湯の町別府」を意味する「泉都」と、通貨の補助単位であるセントを掛け合わせたものです。

愛らしい温泉卵をモチーフにしたキャラクター「温たま」が、カードや券、パンフレットなどに描かれており、親しみやすさが感じられます。市民以外や15歳未満の子どもを対象とした「一般カード」も用意されており、幅広い市民が利用できるようになっています。インターネット経由での残高照会や口座間の移動も可能です。

「泉都」の入手と利用：地域貢献活動が通貨獲得の鍵

「泉都」の入手方法は、地域貢献活動への参加です。公園や海岸線の清掃活動、防犯・防災パトロール、スポーツ大会の運営ボランティア、そして温泉地散策イベントなど、多様な活動に参加することで「泉都」を獲得することができます。

獲得した「泉都」は、別府市内の様々な場所で利用できます。市営温泉や体育施設の利用料金割引、大分トリニータや大分ヒートデビルズの試合チケット割引、別府八湯温泉泊覧会（オンパク）への参加費、さらには飲食店や土産物店での支払いなど、その利用範囲は多岐に渡ります。また、温泉関連グッズや地元工芸品などとの交換も可能です。

さらに特筆すべきは、別府市内のもう一つの地域通貨「湯路（ユーロ）」や、熊本県阿蘇市の地域通貨「Grass（グラス）」との相互利用が可能な点です。1湯路＝100泉都＝100Grassという交換レートで利用でき、地域を越えた経済圏形成に貢献しています。

「泉都」の歴史：地域通貨「湯路」から発展

「泉都」の歴史は、別府市で先に誕生した地域通貨「湯路」に深く関わっています。「湯路」は、2003年に竹瓦温泉周辺のまちづくり活動の中で誕生しました。油屋熊八の肖像が印刷された紙幣形式で、社会貢献活動や地域の資源を活用した活動に支えられてきました。

「湯路」の成功が、カード形式の地域通貨「泉都」の実証実験へと繋がりました。2005年7月に地域再生計画の一環として内閣総理大臣の認可を受け、同年11月に実証実験が開始。2006年2月に正式に事業が開始され、「Grass」との提携を記念して、別府駅や阿蘇駅などで旅行者への無料配布が行われました。その後、2010年4月にはカード形式から紙の「泉都券」のみの運用に移行しました。

「泉都」の意義：温泉都市別府の持続可能な発展を支える

「泉都」は、単なる地域通貨としてだけでなく、別府市の地域活性化に大きく貢献しています。地域貢献活動への参加を促進し、地域住民の協調性を高め、地域経済の活性化に繋がる好循環を生み出しています。また、他の地域通貨との相互利用は、地域間の交流促進や広域的な経済圏形成にも貢献しています。

「泉都」は、温泉都市としての別府市の魅力を再発見し、その持続可能な発展を支える重要な要素となっています。これからも、別府市の発展に貢献し続けることが期待されます。

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