法令全書

法令全書：日本の法令史を刻む公式記録

「法令全書」は、日本の独立行政法人国立印刷局が発行する定期刊行物です。官報に掲載された法令を、その種類ごとに整理して一冊にまとめ、毎月発行される点が大きな特徴です。官報の縮刷版的な役割も担いますが、官報に掲載される全ての情報が法令全書に収録されるわけではありません。例えば、会社の公告などは含まれません。

六法全書などの一般的な法令集は、この法令全書や官報を情報源として編集されています。つまり、法令全書は日本の法令を理解する上で、最も信頼できる一次資料の一つと言えるでしょう。

特に、官報が創刊される以前の、1867年（慶応3年）から1883年（明治16年）までの法令を調査する際には、その価値が際立ちます。この時代の法令を網羅的に調べられる資料は限られていますから、法令全書は研究者にとって非常に貴重な存在なのです。

明治、大正、昭和時代の法令全書は、それぞれ『明治年間法令全書』『大正年間法令全書』『昭和年間法令全書』として復刻版が出版されています。また、明治45年7月までの法令全書は、国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能です。

近年の動向と廃止の方向性

近年、官報のデジタル化が大きく進展しており、法令情報のインターネット提供が本格化しています。2023年10月25日に開催された官報電子化検討会議では、官報の発行に関する法律の制定に伴い、法令全書の刊行を廃止する方向で検討が進められることが決定されました。

その後、官報の発行に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律が成立し、内閣府設置法と独立行政法人国立印刷局法から「法令全書」の記述が削除されました。これにより、法令全書は国立印刷局による公式刊行物としては廃止されることになります。

法令全書の収録内容

法令全書には、さまざまな種類の法令が収録されています。地方自治体の条例は対象外ですが、以下のようなものが含まれます。

憲法改正
詔書
法律
政令
条約
内閣官房令
内閣府令
デジタル庁令
復興庁令
省令
規則
庁令
訓令
告示

法令全書の沿革

法令全書の発行は明治時代から始まり、その歴史は長く、発行形態や収録内容、販売方法などが時代とともに変化してきました。

1885年（明治18年）：印刷局と契約、創刊。当初は書肆博聞社が販売。
1886年（明治19年）：官報付録として発行開始。
1889年（明治22年）：官報付録から独立し、定期刊行物として販売開始。官報購読者には無料配布。
1890年（明治23年）：無料配布を終了し、定価販売へ。
以降、販売方法や編成方法などが繰り返し変更され、1916年からは印刷局直売、1921年からは全国の官報販売所による販売配送体制に移行しました。
第二次世界大戦後、発行根拠法令の名称や集録内容が何度か改正されました。
* 近年では、内閣府令、デジタル庁令、内閣官房令などが追加されました。

法令全書と日本の法令史

法令全書は、単なる法令の集積物ではありません。日本の法令体系の変遷や、社会の変化を反映する歴史的資料でもあります。その長きにわたる歴史と、詳細な収録内容は、法学者、歴史学者、そして法令に関わる全ての人々にとって、かけがえのない資源と言えるでしょう。法令全書の歴史をたどることは、同時に日本の歴史をたどることでもあります。

関連資料

法令全書以外にも、日本の法令史を研究する上で重要な資料が数多く存在します。例えば、江戸時代の法令集である『御当家令条』や、武家社会の法令をまとめた『武家諸法度』などがあります。これらの資料と法令全書を比較検討することで、より深い理解を得ることができるでしょう。

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