法住寺 (京都市)

法住寺：後白河法皇ゆかりの古刹、歴史と文化の息づく寺院

京都市東山区三十三間堂廻り町に位置する法住寺は、天台宗に属する由緒ある寺院です。本尊は不動明王。平安時代後期から鎌倉時代にかけて、後白河法皇の御所「法住寺殿」として栄華を極め、日本の歴史に深く関わってきた寺院として知られています。

建立と法住寺殿

法住寺の起源は定かではありませんが、平安時代中期には藤原為光によって創建されたと伝わります。しかし、その後焼失し、現在の姿になるのは平安時代後期のこと。後白河天皇が上皇となり、法住寺を院の御所としたことから、広大な敷地を有する壮麗な「法住寺殿」が建設されました。

法住寺殿は、後白河法皇の政治の中枢として機能する一方、華麗な宮廷文化の花開いた場所でもありました。南殿、北殿、蓮華王院御堂（三十三間堂）、最勝光院など、多くの建物が建てられ、多くの貴族や僧侶が行き交いました。

中でも、南殿は藤原信頼の中御門西洞院邸の建物を移築したとされ、寝殿を中心とした壮大な造りだったと考えられています。北殿は、西側の七条河原殿と東側の東御所から構成されていました。

木曽義仲の襲撃とその後

法住寺殿は、後白河法皇と平家の栄華を象徴する存在でしたが、寿永2年（1183年）、木曽義仲の軍勢による襲撃を受け、南殿は焼失しました。法皇は北殿から脱出し、法住寺殿は衰退の一途を辿ります。

その後、源頼朝によって再建が試みられましたが、かつての輝きは取り戻せませんでした。鎌倉時代以降は、後白河法皇の御陵を守る寺院として存続し、妙法院など近隣の寺院と密接な関係を保ちながら、歴史の波を乗り越えてきました。

身代り不動明王と様々な伝承

法住寺には、平安時代の作とされる「身代り不動明王像」が伝来しています。寺伝によれば、円仁（慈覚大師）作とされ、後白河法皇も深く信仰していました。義仲の襲撃の際、法皇の身代わりとなって難を逃れたという伝承が残っており、毎年11月15日には不動会が営まれています。

また、江戸時代には大石内蔵助が参拝したと伝えられ、その縁から四十七士木像も安置されています。幕末には、御陵の真偽を巡る議論がありましたが、当時の住持が御陵を掘ったところ、後白河法皇の遺骨が発見されたという逸話も残されています。

明治以降と現在

明治時代に入ると、後白河天皇陵と妙法院門跡法親王の墓所が寺域から分離されました。その後、寺名は一時「大興徳院」に改称されましたが、1955年に「法住寺」に復名されました。現在でも、後白河天皇陵とは密接な関係を保ち、法皇像の模作を安置するなど、歴史と伝統を受け継いでいます。

さらに、漫画家・長谷川町子の菩提寺としても知られ、境内に長谷川町子の墓と色紙が展示されています。

境内と行事

法住寺の境内には、本堂、阿弥陀堂、庭園、庫裏、鎮守社、福寿観音、十三重石塔、山門（竜宮造）、後白河天皇法住寺陵など、数々の建造物や史跡があります。

年間を通して様々な行事も開催されており、1月15日の無病息災大根炊き、5月2日の後白河院御聖忌法要、10月第2日曜日の今様歌合せ、11月15日の身代不動尊大祭、12月14日の義士大祭など、歴史と文化に触れる機会が豊富です。

法住寺は、平安時代後期の華麗な文化から、現代に続く歴史と伝統を凝縮した寺院です。静寂に包まれた境内には、歴史の重みを感じ、静かに時を過ごせる場所です。静かな佇まいの中に、歴史の息遣いを感じることができるでしょう。

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