藤原為光

藤原為光（ふじわら の ためみつ）

藤原為光は、平安時代中期に活躍した公卿で、藤原北家為光流の祖として知られています。天慶5年（942年）に生まれ、正暦3年（992年）に51歳でこの世を去りました。右大臣・藤原師輔の九男として生まれ、母は醍醐天皇の皇女である雅子内親王です。その生涯は、栄華を極めた時代もあれば、失意の時もあり、激動の時代を生き抜いた人物でした。

経歴

為光は、村上天皇の時代に官界に入り、天暦11年（957年）に従五位下に叙せられたのを皮切りに、侍従、左兵衛権佐などを歴任しました。武官としての経験を積みながら昇進を重ね、応和2年（962年）には従五位上・右近衛少将に任じられました。その後も、五位蔵人を務めるなど、着実にキャリアを積み重ねていきます。

康保4年（967年）には、冷泉天皇の即位に伴い蔵人を務めましたが、同年10月に従四位下に叙せられたのを機に蔵人を去り、弁官に転じます。安和2年（969年）には、叔父であり義兄弟でもあった左大臣・源高明が失脚する安和の変に連座し、一時的に昇殿を止められましたが、すぐに許され、左中弁、蔵人頭（頭弁）に昇進しました。

天禄元年（970年）には、参議兼左近衛中将として公卿に列し、異母兄である伊尹・兼通の庇護を受け、天延元年（973年）には権中納言に抜擢されるなど、急速に昇進を重ねました。貞元2年（977年）には、従二位・大納言となり、兼通が没すると、筆頭大納言として、権勢を誇ります。しかし、兼通の死後、兼家が台頭すると、再び兼家との間で、政治的な駆け引きを繰り広げることになります。

永観2年（984年）には、花山天皇が即位すると、娘の藤原忯子を入内させ、天皇の寵愛を受けることで、為光自身も権力を握りますが、寛和元年（985年）に忯子が急死したことで、花山天皇は出家してしまいます。これにより、為光の勢力は一時的に衰退しました。しかし、兼家が左大臣・源雅信に対抗するため為光との連携を図り、寛和2年（986年）には右大臣に任じられ、寛和3年（987年）には従一位に叙せられました。永延2年（988年）には、妻と忯子の菩提を弔うため、法住寺を建立しました。

正暦2年（991年）には、道隆の推挙で太政大臣に任じられ、翌正暦3年（992年）に51歳で亡くなりました。死後、正一位が贈られ、相模国を封じられました。諡は恒徳公です。また、邸宅であった一条院は姪の詮子に相続されました。

官歴

為光の官歴は、『公卿補任』に詳しく記録されています。以下はその一部です。

天暦11年（957年）：従五位下
天徳2年（958年）：侍従
応和2年（962年）：従五位上、右近衛少将
康保4年（967年）：従四位下
康保5年（968年）：従四位上、権左中弁
天禄元年（970年）：参議、左近衛中将
天延元年（973年）：従三位、権中納言
貞元2年（977年）：従二位、大納言
寛和2年（986年）：右大臣
寛和3年（987年）：従一位
正暦2年（991年）：太政大臣

系譜

藤原為光は、多くの子供たちに恵まれました。

父：藤原師輔
母：雅子内親王
正室：藤原敦敏の娘
長男：藤原誠信
次男：藤原斉信
長女：藤原義懐室
次女：藤原忯子（花山天皇女御）
継室：藤原伊尹の娘
三男：藤原道信
四男：藤原公信
三女：寝殿の御方（源雅信室）
四女：藤原儼子（花山法皇妾）
五女：藤原穠子（源兼資室）

人物

為光は、その才能と政治手腕によって、急速に昇進を重ねました。しかし、その一方で、権力闘争にも巻き込まれ、栄光と挫折を繰り返しました。また、娘の忯子を花山天皇に入内させるなど、外戚としての地位を確立しようとしましたが、忯子の死によってその目論見は頓挫しました。しかし、その後の兼家との連携によって、右大臣、太政大臣にまで上り詰め、その生涯を終えました。

為光は、日記である『法住寺相国記』を著しており、当時の宮廷の様子や、自らの心境などを記しています。

参考文献

山本信吉『摂関政治史論考』
黒板勝美・国史大系編修会 編『公卿補任 第一篇』
黒板勝美・国史大系編修会 編『尊卑分脈 第一篇』
市川久 編『近衛府補任 第一』

外部リンク

* 『摂関期古記録データベース』国際日本文化研究センター（『法住寺相国記』の読み下し文を公開）

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