法隆寺金堂釈迦三尊像

法隆寺金堂釈迦三尊像

法隆寺金堂釈迦三尊像は、奈良県斑鳩町の法隆寺金堂に安置されている飛鳥時代の仏像です。聖徳太子ゆかりの寺院である法隆寺に伝来し、日本の仏教美術史における重要な位置を占めています。

法隆寺と金堂

法隆寺西院伽藍は、現存する世界最古の木造建築として知られています。ただし、創建当初の建物は670年に焼失し、現在の金堂は7世紀末頃に再建されたものと考えられています。金堂内には、釈迦三尊像（中の間本尊）、薬師如来像（東の間本尊）、阿弥陀三尊像（西の間本尊）の3組の本尊が安置されています。これらの仏像はすべて銅造です。

釈迦三尊像

釈迦三尊像は、金堂の中央に位置する「中の間」の本尊です。像の背後には大型の蓮弁形光背があり、両脇侍菩薩はそれぞれ宝珠形の光背を負っています。中尊の釈迦如来坐像は高さ87.5cm、左脇侍（東脇侍）は92.3cm、右脇侍（西脇侍）は93.9cmです。中尊は施無畏与願印を結び、杏仁形の眼とアルカイック・スマイルと呼ばれる微笑が特徴的です。両脇侍像はほぼ同形で、三山冠をいただき、天衣をまとい、胸飾りをつけています。

光背と台座

蓮弁形光背は、頭光部、身光部、周縁部から構成され、火焔や化仏が表現されています。木造の台座は、上下二段の箱形で、各面に山岳、樹木、飛天、四天王などが描かれています。台座の内部からは、墨書や墨画が発見されており、飛鳥時代人の他界観を表すものと考えられています。

銘文

光背裏面には、623年に止利仏師が聖徳太子のためにこの像を造ったという銘文があります。銘文には、太子の生母である間人皇女の死や、太子の病、そして三尊像の造立の経緯が記されています。ただし、銘文の用語や表現には疑問視する説もあり、その信憑性については議論があります。

作者と様式

釈迦三尊像の作者は、司馬鞍首止利仏師、すなわち鞍作止利です。止利は渡来人の子孫であり、金工技術を仏像製作に応用したと考えられています。本三尊像と共通の様式をもつ仏像は「止利式」仏像と呼ばれ、面長の頭部、古拙の微笑、左右対称性の強い造形などが特徴です。止利式仏像の源流は、中国北朝の北魏の仏像にあるという説が有力ですが、南朝起源説も提唱されています。

本像をめぐる問題

釈迦三尊像は、その制作年代や安置場所、火災との関係など、多くの謎に包まれています。像内の鋳掛けの跡や、光背の損傷、銘文の解釈など、様々な側面から議論が重ねられています。

まとめ

法隆寺金堂釈迦三尊像は、飛鳥時代の仏教美術を代表する傑作であり、日本の文化遺産として非常に重要な存在です。その様式、銘文、そして像をめぐる様々な問題は、古代日本の仏教文化や国際交流を理解するための貴重な手がかりとなります。

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