波長 (1967年の映画)

『波長』

概要

『波長』（はちょう、英語: Wavelength）は、カナダのアーティスト、マイケル・スノーが1967年に制作した実験映画である。この映画は、スティーヴン・ジェイ・シュナイダーによる書籍『死ぬまでに観たい映画1001本』にも紹介されており、映画史における重要な作品の一つと位置付けられている。

制作背景

マイケル・スノーは、映画製作の経験がほとんどない一方で、絵画や彫刻方面で名を馳せたアーティストであった。彼はオンタリオ州立芸術大学でデザインを学び、1950年代半ばにはトロントのスタジオで短編アニメーション『A to Z』を制作し、これが彼の初めての映画作品となった。1962年にはニューヨークに移住し、「Walking Woman」シリーズの写真作品を手掛ける中で、反復と変奏を用いた独自のスタイルを模索していた。

あらすじ

『波長』は、シンプルなロフトの内部で展開される物語だ。4つの格子窓と最低限の家具だけが置かれた空間が舞台であり、カメラはまず全体を映し出すワイドショットから始まり、物語が進むにつれて壁に掛けられた写真へとズームインしていく。受け取る視覚情報は、赤いコートを着た女性が2人の男性に本棚を設置させるシーンから始まり、その後の彼女たちの行動が次第に展開していく。また、ビートルズの楽曲が流れる中、場面はさまざまに変化する。最終的には、静寂と共に映像は白くフェードアウトし、映画は幕を閉じる。

キャストと制作

本作のキャスティングは、スノーの友人たちの中から行われた。エイミー・タウビンやホリス・フランプトンなどが出演している。スノーは撮影準備に1年を費やし、ロフトの壁にイースト川の写真を掲げるなど映画のビジュアル要素に心を砕いた。撮影自体は1966年12月に行われ、特にズームや光の変化に重きを置いた技術が導入された。

音響と技術

音響に関しては、初めはクレッシェンドを考えていたものの、最終的にはオーディオオシレーターを使用して音声を構成した。サウンドトラックでは、ラジオの音楽としてビートルズの曲が使用され、映画全体の雰囲気を作り出す大きな要素となった。

映画の構造

『波長』の特徴的な点は、ズームの手法を通じて空間を縦に移動する独特の視覚体験である。これにより、観客は映画の発展に伴う心理的な変化を体感できるように設計されている。作品には時間や死に関するテーマが織り込まれており、視覚的な要素が観客の理解を手助けする仕掛けとなっている。

評価と影響

本作は、1967年の公開時には多くの映画作家たちによって高く評価され、「映画史上の画期的な出来事」とされています。また、ベルギーの実験映画祭でグランプリを受賞し、多くの批評から現代の映画アートにおける影響力を認識されています。特に、アネット・ミシェルソンはこの映画を「傑作」と称し、映画史における新しい試みとして位置付けています。

結論

『波長』は、ただの映画以上の存在であり、視覚と音響の相互作用を探ることで、観客に新たな体験をもたらす作品である。その独自のアプローチは、実験映画の枠を超えて広く評価され続けている。

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