洗濯脱水

『洗濯脱水』は、1999年8月21日にリリースされた所ジョージの16枚目のアルバムです。このアルバムは、所さんのデビュー時からの盟友であり、当時テレビ番組『MUSIC HAMMER』で共演していた坂崎幸之助さんがプロデューサーを務めたことが大きな特徴です。

バップレコードに移籍して以降、井上鑑さんの編曲によるダイナミックな曲調が多かった所さんの楽曲ですが、このアルバムでは原点回帰ともいえるアコースティックなサウンドが主体となっています。これは、坂崎さんの提案によるもので、レコーディング開始時にはわずか2曲しか完成していなかったというエピソードからも、制作過程での二人の密な連携が伺えます。

アルバムの楽曲は、所さんの独特な視点から描かれたユーモラスな歌詞が魅力です。ギターコードが歌詞に併記されているのも、特徴の一つでしょう。アルバムタイトルにもなっている「洗濯脱水」という言葉は、所さんが以前に自著『四字列語』で造語として発表していたものです。

収録曲はバラエティ豊かです。

駅前のワシントン条約：自転車のマナーが悪い人を「ワシントン条約にのっていない保護動物」と皮肉ったコミカルな曲です。
拓郎さんのギターです：吉田拓郎さんからギターを譲り受けたことがきっかけで生まれた曲で、実際にそのギターが伴奏に使われています。
恋の唄：吉田拓郎さんから提供された曲に、所さんが2番の歌詞を付け足した共作曲です。坂崎幸之助さんと篠原ともえさんがコーラス、森高千里さんがドラムを担当しています。所さんはお返しに吉田拓郎さんに「精霊もどし」という曲を提供しましたが、拓郎さんからは「要らない」と言われてしまったそうです。
西瓜：吉田拓郎さんの「リンゴ」をパロディにした曲です。
コンドコソ飛んで行く：「コンドルは飛んでいく」のパロディで、リストラの危機に直面したサラリーマンの悲哀を歌っています。
雪：1分足らずの短いながらも叙情的な小品です。
化けて出ている：ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」のパロディで、厚化粧の女性を皮肉った歌詞が特徴です。オリジナルを歌った宇崎竜童さんがゲストとして参加しています。
泳げたいやき屋のおじさん：子門真人さんの「およげ!たいやきくん」のパロディ。元々は『MUSIC HAMMER』で発表された曲ですが、あまりに原曲に似ていたため、企画シングルへの収録が見送られたという経緯があります。歌詞は、たい焼き屋のおじさんが海に飛び込んでしまうという内容で、その後の展開は不明のままです。この曲は後にパラパラ調にアレンジされ、「デジタル所さん」の挿入歌としても使用されました。
酒と肴と酒と酒：河島英五さんの「酒と泪と男と女」のパロディです。
雨が空に戻るまでに：初期の未発表曲を初レコーディングしたものです。
後悔してます：初期の未発表曲を初レコーディングしたものです。
明石家さんまさんに聞いてみてもネ：明石家さんまと共に歌った「明石家さんまさんに聞いてみないとネ」のセルフパロディ。本家同様にさんまさんをゲストに迎えていますが、丁寧なやりとりとは裏腹に、歌詞の中ではぞんざいな扱いをしています。
* ご自由にどうぞ：娘たちへの想いを綴った歌で、2009年にテレビ番組で紹介されました。

アルバム全体を通して、所さんのユニークな世界観と、様々な音楽ジャンルへの挑戦が感じられる作品となっています。アコースティックサウンドを基調としながらも、パロディや風刺、ユーモアが盛り込まれており、聴きごたえのあるアルバムです。所さんの音楽活動の幅広さを改めて感じることができる一枚と言えるでしょう。

もう一度検索