津軽信英

津軽信英の生涯

青年期と黒石支藩の設立まで

津軽信英（つがる のぶふさ）は、元和6年（1620年）に陸奥国弘前藩の2代藩主、津軽信枚の次男として江戸の神田で生まれました。彼の母は、松平康元の娘であり、徳川家康の養女であった満天姫です。ただし、彼の実母は別の女性であり、満天姫が子を持たなかったために実母から引き取られたという説もあります。

信英は、寛永8年（1631年）に異母兄・信義とともに徳川家光に面会し、さらに1642年には幕府の小姓組に出仕して旗本となります。その際、兄から1000石を譲られることになりました。信英が小姓組や書院番に昇進できたのは、徳川家康の義理の孫という背景が大きいと考えられています。正保2年（1645年）には幕府から300俵の蔵米を支給され、西の丸書院の書院番に任じられ、着実に地位を築いていきました。

津軽家の相続問題

正保4年（1647年）、領地内の評判が良くなかった当主・信義とその子供（後の信政）が一門や家臣から擁立運動を受けることになります。この騒動により、藩内には多くの処罰がありましたが、信英には影響が及びませんでした。明暦元年（1655年）に信義が死去した際、幕府は若輩の信政を補佐するために信英に5000石を与えることを決定しました。この際、彼の持ち分は津軽黒石周辺の2000石、平内の1000石、上野国の2000石とされ、合計で5000石を得ることとなりました。この出来事は、信英の母が家康の養女であることが影響したと見る向きもあります。

黒石の領主としての支配

明暦2年（1656年）、信英は津軽に入り、藩政を見つつ自領の用地選定を行いました。彼は黒石に整備を施し、黒石城を再構築しました。また、町並みを整え、商業の振興に尽力しました。信英の時代に黒石藩は江戸時代末期に正式に大名となる前から、実高で1万石を超えていたと言われています。

信英は、藩主信政の代理として江戸と弘前、黒石を頻繁に往復しました。明暦3年（1657年）には、「津軽家家訓」を配布し、寛文元年（1661年）には「諸法度」を策定しました。これらは諸事項にわたり生活規範として機能し、地域の発展に寄与しました。また、弘前藩庁日記を記録させ、重要な歴史的資料を残しました。

16歳になった信政が初めて国許入りした際、信英は彼の教育に積極的に関与し、儒学者・山鹿素行を招聘しようと試みましたが、これは実現しませんでした。信英は武術や学問にも秀でており、多才な人物でした。彼に対する信頼は高く、「彼を藩の後継に」との声が上がるほどでした。

最後の年

寛文2年（1662年）に信英は黒石を巡察中に体調を崩し、弘前城に移されましたが、快復することなく9月22日に死去しました。享年は43歳で、葬儀は儒教式で行われ、遺体は現在の黒石神社に祀られています。

信英の生涯は、江戸時代における地域の発展とその後の津軽家の強化に寄与した彼の功績によって今なお語り継がれています。

もう一度検索