津軽承叙

津軽承叙：黒石藩最後の藩主から子爵議員へ

津軽承叙は、激動の時代を生きた稀有な人物です。江戸時代末期に黒石藩の藩主として生まれ、明治維新を経て華族として貴族院議員にまで上り詰めた経歴を持ちます。その生涯は、日本の歴史的転換期における大名から近代政治家への変遷を象徴するものでした。

承叙は、天保11年（1840年）、津軽氏の一門である津軽順朝の次男として誕生しました。幼少期は本次郎と名乗り、のちに朝澄と改名します。その後、陸奥国黒石藩3代藩主・津軽承保の養子となり、承保の没後に家督を継承。兄にあたる弘前藩主・津軽順承から偏諱を受け、承叙と名乗るようになります。

安政5年（1858年）には従五位下・式部少輔に叙任され、官職に就きます。慶応4年（1868年）の戊辰戦争では、本家の弘前藩主である津軽承昭と共に官軍に参加。箱館戦争において武功を挙げ、その功績が認められ、明治2年（1869年）には賞典金1,000両が下賜されました。

明治2年（1869年）の版籍奉還により知藩事となり、華族に列します。明治4年（1871年）の廃藩置県まで黒石藩知事を務めました。版籍奉還時に定められた家禄は現米802石。明治9年（1876年）には金禄公債証書発行条例に基づき、家禄と引き換えに1万7254円26銭8厘の金禄公債を受け取っています。これは華族受給者の中で上位にランクされる額でした。

明治17年（1884年）7月8日、華族令の施行により子爵に叙せられます。さらに、明治23年（1890年）7月10日には貴族院が開設されると同時に貴族院議員（子爵議員）に就任。明治30年（1897年）7月10日まで議員としての職務を全うしました。

政治家としての活動に加え、承叙は和歌の才能にも恵まれていました。「日本英傑百首」にも名を連ねるなど、文化人としての側面も持ち合わせていました。明治36年（1903年）12月7日、64歳でその生涯を閉じました。承叙の死後、跡を長男の津軽類橘が継ぎました。承叙の墓所は東京都台東区上野の谷中墓地にあります。

津軽承叙の生涯は、激動の時代を生き抜き、大名から華族へと身分を変えながらも、政治家、そして文化人として活躍した稀有な存在であったことを示しています。彼の功績は、現代においても日本の歴史を語る上で重要な要素となっています。彼の生きた時代背景や、政治的立場、そして和歌への造詣など、多角的な視点から研究することで、より深く理解できるでしょう。

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