津軽石川

津軽石川

津軽石川は、岩手県下閉伊郡山田町に源を発し、宮古市を経て太平洋へと注ぐ、全長21kmの二級河川です。この川は、津軽石川水系の本流であり、上流部では豊間根川と名前を変え、荒川川と合流します。特に、秋から冬にかけてのサケの遡上が有名で、「鮭川」とも呼ばれています。

歴史

サケの遡上と人工孵化

津軽石川は、11月から2月にかけて、産卵のために多くのサケが遡上することで知られています。明治38年（1905年）には、サケの人工孵化が開始されました。河口に設置された建網式の袋網でサケを捕獲し、採卵場で人工授精を行います。孵化した稚魚は、翌年の4月末に放流され、この人工孵化事業は成功を収め、発展を続けました。

東日本大震災の影響と復興

2011年3月11日に発生した東日本大震災の大津波は、津軽石川の孵化場に壊滅的な被害をもたらしました。しかし、その後、急速な復興が進められ、孵化場は元の状態を取り戻しつつあります。

川の名前の由来

津軽石川の名前には、いくつかの伝説があります。

弘法大師の伝説

江戸時代から伝わる伝説の一つによれば、昔、旅の行人がこの地に宿を求めた際、親切な村人が彼を泊めました。翌朝、行人はお礼として紙包みを渡しましたが、中には石が入っていました。村人が石を川に投げ捨てたところ、翌年からサケが大量に遡上するようになったと言います。村の長老が稲荷山でお祈りをしたところ、行人が弘法大師であったことが判明し、過去に津軽で悪口を言われたため、川に石を投げ入れてサケが遡上しないようにしていたが、この村の親切に感謝してサケを戻したという話です。この出来事から、村は「津軽石」と呼ばれるようになったとされています。

後藤又兵衛の伝説

別の伝説では、サケ漁の最中に異様な浪士が現れ、サケを盗んだことから漁師と争いになり、浪士は殺されました。死に際に浪士は後藤又兵衛と名乗り、遺恨を晴らすために川にサケが遡上しないようにすると言い残したと言います。その後、本当にサケが遡上しなくなったため、漁師たちは怨魂を祀ると再びサケが遡上するようになったとされています。また、別の話では、飢饉に苦しむ村人を救うために、後藤又兵衛が藩のサケを分け与えたために磔にされたという物語もあります。村人は彼に感謝し、サケ漁の前に又兵衛の人形を祀って豊漁を祈るようになったと言われています。この人形には、サケの霊、義民の鎮魂、異人殺し、大師伝説など、様々な意味が込められています。

その他の伝説

『下閉伊郡志』によると、享禄元年（1528年）に沼里館主一戸行政が南部に入部した際、津軽郡浅瀬石明神の奇岩を恵比寿堂に祀ったとも伝えられています。

まとめ

津軽石川は、サケの遡上という自然の恵みと、数々の伝説が語り継がれる歴史的な場所です。東日本大震災からの復興を遂げながら、今もなお、地域の生活と文化に深く関わっています。

参考文献

「角川日本地名大辞典」編纂委員会『角川日本地名大辞典 3 岩手県』角川書店、1985年。ISBN 4-04-001030-2。
（有）平凡社地方資料センター『日本歴史地名大系 第3巻 岩手県の地名』平凡社、1990年7月13日。ISBN 4-582-91022-X。

関連項目

* 岩手県の二級水系一覧

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