津雲貝塚

津雲貝塚（つくもかいづか）

津雲貝塚は、岡山県笠岡市西大島に位置する縄文時代晩期の貝塚遺跡であり、その学術的価値から国指定史跡となっています。

概要

津雲貝塚は慶応3年（1867年）頃、工事中に遺物が発見されたことが契機となり、その存在が知られるようになりました。大正4年（1915年）には、鳥居龍蔵によって初めての発掘調査が行われ、その後、多くの研究者が人骨を求めて調査に携わってきました。特に、厚さ約30cmの貝塚層から170体を超える縄文人の人骨が出土したことで、その名が全国に知れ渡るようになりました。

現在でも、津雲貝塚は一部の教科書に掲載されるなど、縄文時代を研究する上で重要な遺跡として認識されています。遺跡は発掘当時から現在に至るまで、所有者の畑として管理されています。

出土した人骨は、ほとんどが仰臥屈葬の状態で発見されており、多くに抜歯の痕跡が見られます。また、貝輪や腰飾り、鹿角製の耳飾りを身に着けた成人骨や、石製の首飾りをした小児骨も見つかっています。

貝塚からは、縄文土器、石鏃、削器、石錘、土偶、土板、鹿角製の釣針といった多様な遺物が出土しています。これらの遺物から、早期から晩期に至るまでの土器が出土していますが、特に後期・晩期のものが主体となっています。

発掘調査には、京都帝国大学（現京都大学）の清野謙次なども関わっており、出土した豊富な人骨資料は、清野が原日本人説を唱える際の重要な根拠となりました。これらの貴重な資料は、現在、京都大学、笠岡市立郷土館、そして個人宅に所蔵されています。

2021年には、イギリスのオックスフォード大学などの研究チームが、津雲貝塚から出土した縄文時代（紀元前1370年～1010年頃）の成人男性の骨を調査した結果、790ものサメによるものと思われる傷跡が確認され、この男性がサメに襲われて死亡したことが判明しました。襲撃に関与したサメの種類は、イタチザメかホホジロザメである可能性が高いとされています。この発見により、この成人男性は、これまで世界最古のサメによる犠牲者とされていたプエルトリコで発見された人物（西暦1000年頃）を遡り、世界最古のサメによる犠牲者であると結論付けられました。

歴史

1968年（昭和43年）5月11日：国の史跡に指定
2014年（平成26年）1月23日：縄文時代後期から晩期のものとみられる土偶の頭部が出土（笠岡市教育委員会発表）
2021年（令和3年）6月23日：世界最古のサメ襲撃による犠牲者が発見されたと発表（イギリス・オックスフォード大学）

参考文献

京都帝國大學文學部考古學研究報告 第五冊「備中津雲貝塚發掘報告・肥後轟貝塚發掘報告」 臨川書店 刊

関連項目

貝塚
縄文時代の遺跡一覧
中国地方の史跡一覧
日本の貝塚一覧

外部リンク

笠岡市 史跡 津雲貝塚
国指定文化財等データベース

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