洪鐘宇

洪鍾宇（こう しょうう、홍종우、ホン・ジョンウ）の生涯

洪鍾宇は、1850年から1913年（推定）にかけて生きた李氏朝鮮末期の両班であり、議政府参事を父に持ち、京畿道安山で生まれ育った。彼の家族は裕福であり、良い教育を受ける環境に恵まれていた。1886年、洪は日本に渡り、朝日新聞社で印刷工として働きながらフランス語を学んだ。彼は勉強の意欲が強く、1890年には私費留学でフランスに行くことができ、朝鮮初のフランス留学生としての地位を確立した。

フランス滞在中、洪は西洋文明に触れていくが、彼の心には朝鮮の中央高官になるという夢が強く根付いていた。しかし、この夢を実現するためには朝鮮の王や皇后の推薦が必要であり、洪にはそのつてがなかったため、夢は叶わぬこととなった。

金玉均の暗殺

朝鮮王妃閔妃は、甲申政変により自らに危機をもたらした金玉均の復讐に取りつかれていた。彼女は、開化派である金玉均の近くに接近できる暗殺者を探しており、洪は日本で生活していたときに、その誘いを受けた。閔妃の勧めを受けて官職を得たいという思いから、洪はこの暗殺計画を引き受けることにした。

1894年、洪は亡命中の金玉均に接近し、彼を上海に誘い出した。同行した東和洋行ホテルにおいて、洪は金玉均を銃撃し、命を奪った。事件後、清国警察の尋問を受けた洪は、「私は朝鮮王の命令で行動した。金玉均は親日派の逆賊であり、清国の敵である」と主張し、形式的に逮捕されるもすぐに釈放される。

金玉均の死体は清国軍艦によって朝鮮に運ばれ、彼の死後に重い罪を受けた。金玉均の処刑は、日本の福沢諭吉の怒りを招き、朝鮮の開化の道が閉ざされるという認識を促した。

帰国と晩年

帰国後、洪鍾宇は閔妃に歓迎され、地方裁判所の長官に任命された。彼は皇国協会の幹部となり、独立協会の李承晩を逮捕し、裁判での死刑を求刑するが、彼は終身刑に減刑されたのち、アメリカに亡命することとなる。李承晩は後に韓国初代大統領に返り咲いた。

洪は済州島の長官に任命されたが、さらなる要職を求めるも拒否され、その後、愛人と共にパリに旅立つ。その旅の背景には、彼が開化派の暗殺者としての役割を果たした後の無用の長物としての失意があった。日韓併合後、洪の消息は不明であり、彼は1913年に没したと考えられている。

洪鍾宇は、その短い生涯の中で、激動する朝鮮の政治情勢の中で暗殺者として名を馳せる一方で、自らの夢に向かう道が閉ざされていく様子を体現した人物である。彼の存在は、朝鮮の歴史において注意深く考察されるべき一つの側面を提供する。

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