活字合金

活字合金は、印刷用活字を作るために用いられる特殊な合金であり、その主な構成要素は錫（すず）、鉛（なまり）、アンチモンです。この合金は、15世紀半ばにドイツのヨハネス・グーテンベルクによって発明された活版印刷技術に欠かせないものでした。

活字合金の組成と特性

一般的な活字合金の組成例としては、鉛が約80%、アンチモンが約17%、錫が約3%とされています。この組成の場合、合金の融点は約240℃です。活字を鋳造によって製造するためには、合金にはいくつかの重要な性質が求められます。それは、微細な鋳型内にスムーズに流れ込むための高い流動性と、凝固する際の収縮率が小さいこと（理想的にはわずかに膨張すること）です。

鉛は凝固時に約3.44%収縮しますが、アンチモンは凝固時に約0.95%体積が膨張する特性を持っています。鉛にアンチモンを加えていくと、合金全体の収縮率が直線的に減少し、アンチモンが約75%になると収縮率はゼロになります。この特性を利用して、活字の形状を正確に保つことができるのです。

活字の用途に応じて、合金の組成は調整されます。例えば、紙型用など、より硬さが求められる活字には、錫の割合を増やします。また、活字以外の用途で使用される場合は、硬鉛と呼ばれることもあります。青銅も凝固収縮率が小さい素材ですが、融点が高いため、低融点の活字合金には使用されません。

和文タイプライターと活字合金

耐久性の観点から、和文タイプライターの活字には亜鉛ダイキャスト製のものが用いられることもありました。これは、活字合金の特性が必ずしも全ての用途に適しているわけではないことを示しています。

まとめ

活字合金は、印刷技術の発展に大きく貢献した重要な材料です。その組成と特性を理解することは、活版印刷の歴史を深く理解する上で不可欠です。合金の組成を微調整することで、様々な用途に対応できる柔軟性も、活字合金が広く用いられた理由の一つと言えるでしょう。

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