紙型

紙型（しけい）とは

紙型とは、活版印刷において、原版の複製を作成するために使用される紙製の鋳型のことです。活字を組んだ版から、鉛版を鋳造する際に用いられます。

紙型の作成方法

紙型は、組み上げた印面の上に特殊な紙を載せ、加熱と加圧によって作成されます。この特殊な紙は、溶けた鉛の温度に耐えられるように作られています。作成された紙型は、鉛版鋳造機の鋳型にセットされ、そこに溶かした鉛合金（「湯」と呼ばれる）を流し込むことで、鉛版が作成されます。この鉛版が、印刷用の版として使用されます。

複数の版を重ねて使用する場合は、紙型から新しい鉛版が作成されます。また、紙型を湾曲させた状態で「湯」を注ぐことで、輪転印刷機で使用される曲面の鉛版を形成することも可能です。

紙型の利点

紙型を利用することには、以下のような利点があります。

耐刷性の向上: 活版そのものは耐刷性が低く、数千枚の印刷で磨耗してしまいます。紙型から複製した版を使用することで、大部数の印刷が可能になります。
版の保存: 金属活字を組んだ版は非常に重く、重版の際に保存することは大きな負担となります。紙型は軽くて薄いため、保管が容易です。
* 輪転機用版の作成: 輪転機用の湾曲した版は、かつては活字をくさびで固定していましたが、活字の脱落などの問題がありました。紙型の導入により、一枚板で管理しやすい丸鉛版の作成が可能になりました。

紙型の歴史

紙型が登場する前には、17世紀末から粘土を用いて活字の雌型を得る方法が試みられていました。18世紀には、石膏を型とする方法がいくつか考案され、特許も出願されました。そのうちの一つはスタンホープに売却され、研究の結果、一定の普及を見ました。紙による型どりの発明は、19世紀のフランス人ジュヌーによってなされました。当時は専用のブラシで叩いた上で圧搾することで型を取っていました。

紙型の欠点

紙型から型どりする場合、印刷に使われるのは活版の複製の複製となるため、活版でそのまま刷ったもの（原版刷り）に比べて、印字の精密さは劣ります。また、鉛活字は加熱すると縮む性質があり、紙型も加熱によって縮むため、原版よりもわずかにサイズが小さくなります。この差は版を重ねるごとに大きくなり、目立つようになります。

紙型の訂正

誤植などを訂正する場合、紙型そのものは訂正できないため、鉛版にした上で訂正箇所を切り取り、正しく組版したものをはめ込みます。これを象眼（象嵌）訂正と呼びます。一字象眼、一行象眼などがあります。誤植がなくとも、奥付の発行日などは象眼訂正によることが多いです。版を重ねた書物を見ると、活字の縮み具合を観察することができます。

紙型の利用に関する二つのスタンス

印刷、特に活版印刷に関する解説書を見ると、紙型の利用について二つの異なる立場が見られます。一つは「大量に印刷する場合は紙型を取って複製する」という立場であり、もう一つは「部数が少ない場合は原版刷りを行う」という立場です。これらの違いは、それぞれの執筆者がどのような編集・印刷の現場を経験してきたかを反映していると言えるでしょう。

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