流作場 (新潟市)

新潟市のかつての大字流作場

かつて新潟県新潟市に存在した大字、「流作場（りゅうさくば）」について解説します。この地名は、昭和43年（1968年）に実施された住居表示によって行政区画としては消滅しました。現在では名称が変わっている場所が多いですが、ここに記す内容は、消滅する直前の旧流作場の状況に基づいています。より広範な新潟市の情報については、別途関連記事をご参照ください。

概要

流作場は、信濃川の河口部右岸に位置していました。江戸時代から明治22年（1889年）にかけて存在した「流作場新田（りゅうさくばしんでん）」の区域にあたります。その地名の由来は、信濃川に形成された「付州（つきす）」と呼ばれる中州における開墾（流作）によるものとされています。もともとは信濃川の中州として始まり、第二次世界大戦後まで存在した古信濃川を境界とするエリアでした。

昭和初期からの信濃川旧河道の埋め立てとそれに続く都市開発、さらに昭和33年（1958年）の新潟駅現駅舎開業などを経て、萬代橋東詰側一帯は急速に都市化しました。現在の新潟駅周辺地区や、万代・八千代地区として知られるエリアの基礎がここで築かれました。

現在、流作場という地名が登記上で「流作場」と「流作場ノ内水島」としてわずかに残るのみで、宅地や商業地などの住居表示上では使用されていません。地名自体も、東大通、萬代橋通り、万代町通り、旧新潟駅前通、新潟県道1号が交わる「流作場五差路」の交差点名や、水島町にある「新潟市立流作場保育園」、そして三和町に鎮座する「流作場鎮守」とされる三社神社など、ごく一部にその名残をとどめるにとどまっています。

地域

かつての流作場は、大きく東部と中央部を占める「新潟駅周辺地区（新潟駅前地区）」と、西部に分かれていました。新潟駅周辺地区に含まれる他のエリアの多くは、主に住宅地となっています。

歴史

流作場の歴史は、信濃川の変遷と密接に関わっています。

島を巡る争い

貞享元年（1684年）、信濃川の浸食により沼垂町が現在地へ移転した後も、信濃川は右岸の沼垂町側を侵食し続けました。これにより、新潟町側には「湊島（みなとじま）」と呼ばれる島が新たに形成されました。島の所有権を巡っては、古くから新潟町と沼垂町の間で争いが絶えず、これを解決するために、毎年2月と8月に双方立ち会いのもとで島と町の間の川の水深を測り、水深が浅い方が島を所有するという取り決めがなされました。どの島にこの取り決めを適用するかで両町の間に食い違いはありましたが、最終的に新潟町側の川の水深が浅かったため、湊島は新潟町の所有となりました。

元禄時代の訴訟

元禄4年（1691年）、沼垂町の住民がこの新しい島で稲作を始めたことが問題となりました。新潟町は度々稲作の中止を申し入れましたが、沼垂町はこれに応じませんでした。新潟町は新発田藩にも仲介を訴えましたが、藩は動こうとしませんでした。事態は進展せず、元禄10年（1697年）、新潟町は沼垂町を相手取り、島の帰属と湊の支配権について江戸幕府に提訴しました。元禄11年（1698年）には幕府による現地検分が行われ、翌元禄12年（1699年）4月26日、幕府は新潟町の主張をほぼ全面的に認める裁許を下しました。

付寄島の開発

「湊島」はその後約50年で大きく成長し、延享年間（1744-1748年）には三つの大きな島に分かれ、沼垂町側に接近しつつありました。島と沼垂町の間には川幅70mから140mほどの浅瀬（古信濃川）が広がり、信濃川の本流は新潟町と島の間を通るようになりました。この頃から島は「付寄島（つきよせじま）」と呼ばれるようになります。

延享3年（1746年）8月、長岡藩は付寄島の開発を五泉町の安倍玄的ら5人に命じました。新潟町は付寄島を新たな町移転候補地と考えていたためこの開発に反対しましたが、長岡藩が十二ヶ条の開発に関する定書を示したことで開発を受け入れました。開発された土地は寛延3年（1750年）7月に長岡藩によって検地され、「附寄島新田」と名付けられました。しかし、土地が低いため度々洪水に見舞われたことから、毎年作柄を見てから年貢を決める永検見地（ながけんみち）とされました。

延享時代の島争い

延享4年（1747年）4月、付寄島の開発が始まると、沼垂町は再び島を巡って動き出しました。彼らは「島は川の水深が浅い方に帰属する」という元禄の訴訟での裁許を根拠に、新潟町を幕府に訴えました。これに対し新潟町は、島の所属はすでに元禄の裁許で決着しており、また、両町立ち合いで水深を測るという約束も沼垂町が50年以上放棄していると主張しました。同年9月、幕府の裁許が下され、この訴訟でも沼垂町は敗訴となりました。

新潟駅周辺地区の発展

第二次世界大戦後、昭和29年（1954年）に戦後初の土地区画整理事業として「新潟駅前土地区画整理事業」が着工されました。これは新潟駅を現在の場所に移転させることを前提とした計画で、広大な水田地帯（42.4ha）が対象となりました。

この事業により、新潟駅から駅前三叉路（現在の流作場五差路付近）まで幅50mの「東大通」が整備され、さらに新発田街道（現在の国道7号）から東大通へ直接繋がる「明石通」も設けられました。東大通には緑地帯が設けられ、電線や下水管が地下に埋設されるなど、電柱や開渠の側溝がない近代的な大通りとして計画されました。

区画整理工事は昭和35年（1960年）3月に完了しましたが、昭和33年（1958年）の新潟駅移転開業時には、企業などによる土地の思惑買いが横行し地価が高騰したため、広い道路に対して空き地が目立つ状況でした。昭和35年（1960年）2月9日に換地処分が公告され、その後昭和36年（1961年）には帝国石油ビルや東映ホテルなどが建設され、都市としての姿を現し始めました。

住居表示による消滅

区画整理により新しい町名が定められ、昭和35年（1960年）頃には流作場は約3600世帯、15600人が暮らす市街地となりました。この頃には「居村町」「〆切町」など多くの通称名が使われていましたが、万代町が駅前区画整理地と、流作場の市街地、信濃川埋立地にまたがるなど、地名や通称が複雑に入り組んでいました。

この混乱を解消するため、昭和43年（1968年）に住居表示が実施されました。これにより、流作場の多くの区域が新しい町名に変更されました。一部には地元住民の反対によって住居表示の実施が見送られた区画もありましたが、それらの区域も昭和52年（1977年）9月に南万代町となることで、行政上の「流作場」という町名は完全に消滅しました。

分立した町字

昭和35年（1960年）以降に、流作場から以下の町字が分立しました。

三和町（さんわちょう）：1968年分立
天明町（てんめいちょう）：1968年分立。小字天明前が由来。
東万代町（ひがしばんだいちょう）：1968年分立。
明石（あかし）：1968年分立。旧明石通の一部が改称。
東大通（ひがしおおどおり）：1960年分立。
弁天（べんてん）：1960年分立。
花園（はなぞの）：1960年分立の「花園町」が1968年改称。
南万代町（みなみばんだいちょう）：1977年分立。旧弁天町を廃止。
春日町（かすがちょう）：1968年分立。
水島町（みずしまちょう）：1968年分立。旧町名「流作場ノ内水島」が由来。

交通

かつての流作場区域およびその周辺には、現在も新潟市の主要な道路や交差点が存在します。

主要な道路として、新潟県道33号新潟停車場線と国道7号の一部をなす東大通・萬代橋通り、そして国道7号の明石通などがあります。

流作場五差路

流作場五差路は、新潟市中央区の万代と東大通の境界付近にある大きな多叉路です。北側から時計回りに萬代橋通、万代町通、東大通、旧新潟駅前通、そして新潟県道1号新潟小須戸三条線が接続しています。

元々は、明治19年（1886年）に架けられた初代萬代橋と万代町通が交わるクランク状の道路でした。明治37年（1904年）に新潟駅が開業すると、駅前の道路とも交わるようになり「流作場三叉路」と呼ばれるようになりました。第二次世界大戦後の昭和29年（1954年）に実施された新潟駅周辺地区の区画整理で東大通が整備されたことにより、現在の「流作場五差路」の形となりました。

東大通の整備後、昭和43年（1968年）には北西側（萬代橋側）に国道7号を跨ぐ横断歩道橋が架けられ、続いて昭和49年（1974年）には南東側（新潟駅側）にも横断歩道橋が設置されました。このうち、北西側の横断歩道橋（万代五横断歩道橋）は老朽化と萬代橋側のスクランブル交差点設置に伴い、平成17年（2005年）に撤去され、現存していません。

万代町通

万代町通は、明治19年（1886年）の初代萬代橋架橋を機に、翌年に県道整備の一環として開通しました。開通当初は「新道」と呼ばれ、萬代橋と沼垂町を直線で結んでいましたが、沿道に民家はほとんどありませんでした。

明治30年（1897年）に沼垂駅、明治37年（1904年）に新潟駅が開業すると、両駅を結ぶ主要道路として重要性が増し、沿道には商店が立ち並ぶようになりました。これに伴い、この道は「万代町通」と呼ばれるようになります。現在の道幅は、昭和20年（1945年）の戦時中の建物疎開によって道路南側の家屋が撤去された結果、開通当初のおよそ二倍の広さとなっています。

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