流星 (航空機)

艦上攻撃機「流星」について

艦上攻撃機「流星」は、大日本帝国海軍が太平洋戦争の末期に開発した多機能機です。その略符号はB7Aで、連合国側では「Grace」と呼ばれました。愛知航空機が設計を担当し、艦上爆撃機と艦上雷撃機の役割を1機で兼ねられるような機体として設計されました。

機体の役割と要求仕様

当時の空母は様々な対艦攻撃用機を搭載していましたが、艦上爆撃機と艦上攻撃機のニーズが異なることから、限られた機体数を効率的に活用するのが難しい状況でした。そのため、流星では急降下爆撃、水平爆撃、雷撃を一機で担うことが求められました。要求された主な性能は以下の通りです。

• - 高度5000メートルで、爆弾を搭載した状態で最大300ノットの速度。
• - 500キロの爆弾を搭載時に航続距離1000海里（1852キロメートル）以上。
• - 800キロ爆弾を搭載時に100メートル以内で離艦が可能。
• - 多様な爆弾や魚雷を装備できる柔軟性。
• - 空戦性能は九九式艦上爆撃機と同等以上。

このような厳しい要求に応えるための設計が開始されましたが、愛知航空機は現行機の改良や量産に追われ、試作作業は難航しました。ようやく1942年12月に試作1号機が完成し、正式には1945年3月に採用され流星改の名が与えられました。

機体構造と設計の特徴

流星は単発レシプロ機で、2人乗りで全金属製のモノコック構造を持ちます。主翼は中翼単葉形式で逆ガル翼を採用し、空気抵抗を低減する工夫が施されています。燃料タンクは主翼内に分散配置され、爆弾倉は胴体内部に設けられています。

また、流星は急降下爆撃に耐えうる剛性を持たなければならず、設計では7Gの引き起こし荷重に耐えることが必要でしたが、強度計算には誤りがあったため、補強のための設計変更が実施されました。特に急降下制動板の設計や、水平尾翼の角度調整機構により、操縦性を向上させる工夫が行われました。

生産と実戦配備

流星の量産は1944年4月から始まりましたが、その高性能と生産の遅延から、最終的な生産機数は111機とされています。流星は空母「信濃」や「雲龍」での発着艦テストを受けましたが、その運用は限定的で、実戦部隊に配備されたのは主に攻撃第五飛行隊と第一〇〇一海軍航空隊のみでした。

戦闘行動

流星は1945年5月以降、千葉県の木更津海軍航空基地に展開し、数回にわたって米軍の艦隊への攻撃を行いました。特に7月25日には、急降下爆撃部隊として出撃し、アメリカ艦船に攻撃を試みました。その際の戦果は不明ですが、4機が損失しました。

終戦時には2機が出撃しましたが、特攻作戦に失敗し流星は撃墜される結果となりました。流星は艦上攻撃機としての運用が一度も成功しなかったものの、その設計と性能は後世に多大な影響を与えました。

現存する流星

終戦後、アメリカ軍によって接収された流星の一部はスミソニアン航空博物館に保管され、2014年には風防の一部が熊本県で発見されるなど、流星は現在でも人々の記憶に刻まれています。日本国内に現存する流星の唯一の機体の部分が存在していることから、その歴史や技術の重要性を感じることができます。

このように艦上攻撃機流星は、その設計思想や実戦における運用の困難さから、多くの教訓を残した航空機として語り継がれています。

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