流鬼国

流鬼国について

流鬼国（りゅうきこく）は、7世紀ごろにオホーツク海の沿岸地域に住んでいた民族であり、彼らの存在については歴史的な文献に記録されています。特に重要なのは、唐の太宗の治世である640年（貞観14年）に行われた朝貢の記録です。この朝貢は、流鬼国が唐に対して外交的な関係を持っていた証拠として多くの研究者によって注目されています。

流鬼国がどの民族に繋がるかについては様々な説があり、オホーツク文化を持つ人々や、現代のニヴフ人に当たるのではないかと考えられています。流鬼国に関する記述は、杜佑が編纂した『通典』や、『唐会要』、『資治通鑑』、『新唐書』など複数の史料に残されています。これらの記録には、流鬼国が唐の首都から15,000里離れた地点に所在し、周囲は海で囲まれていることが記されています。特に『唐会要』では、流鬼国が黒水靺鞨の東北に位置し、三面が海によって隔てられていると説明されています。

唐への朝貢

『資治通鑑』では、流鬼国が朝貢した具体的な日時が記されており、640年3月31日であることが示されています。この記録によれば、流鬼国の使者は到着後即座に太宗に謁見したわけではなく、厳寒の冬を越えてからの参加だったと考えられています。利用された食材や名産品に関する情報は乏しいものの、流鬼国の王が「可也余志」と名乗り、貂の皮を持参したという記録から、彼らの独自の文化と貿易関係が垣間見えます。

流鬼国の存在は、古代の北方民族の中でも特異なものであり、当時の遊牧民とは異なる社会形態を持っていたことがわかります。特に流鬼国の王子が騎都尉に任ぜられたことは注目に値します。乗馬の習慣がほとんどなかった流鬼国の人々が、このような官職についた事例は、彼らが唐との文化的交流や飛躍的な移動の結果であると考えられています。

研究の歴史

流鬼国に関する研究は古くから行われ、多くの学者がその位置や文化的な背景を追求してきました。特に何秋濤やグスタフ・シュレーゲルの学説は、流鬼国の位置を論じる上で重要です。何秋濤は流鬼国をカムチャッカ半島と結びつけ、シュレーゲルは文学や歴史における文化的共通点を指摘しました。いずれも流鬼国の本来の位置付けに議論を呼び起こしました。

その後、日本の東洋史学者白鳥庫吉や和田清を含む多くの研究者が、流鬼国の位置を樺太に特定する説を支持しました。特に菊池俊彦は、考古学的な証拠を用いて流鬼国を樺太のオホーツク文化人と結びつける説を展開しました。彼の見解は、流鬼国と古コリャーク文化人の交易関係や、さらには当時の中国との経済的交流に基づいています。

夜叉国との関係

流鬼国に関連する情報の中で、夜叉国に関する記述が見られます。夜叉国は流鬼国の北に存在し、コリャーク民族の先祖と見なされることがあります。このような民族間の交流は、セイウチの牙を通じて行われた交易に関する記録と共に、流鬼国の人々の生活様式や経済活動を理解する手助けをしています。流鬼国とその周囲の民族には、複雑な関係性があったことが示されています。

流鬼国の研究は、今後も様々な視点からのアプローチが求められる分野であり、これまでの考古学や人類学の研究を通じて、さらなる理解が深まることが期待されています。

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