浅川村 (石川県)

浅川村

石川県河北郡にかつて存在した浅川村は、現在の金沢市東部にあたる地域です。その名称は、村内を流れる主要な河川である浅野川に由来するとされています。

地理

浅川村の地理的な範囲は広大でした。西側は浅野川を挟んで金沢市の市街地に隣接し、金沢の東の玄関口とも言える卯辰山の東麓に位置していました。そこから東へ進むにつれて地形は変化し、標高の高い医王山の西麓に至る山間部、さらに富山県との県境にまで及んでいました。この地域には浅野川のほか、森下川や金腐川といった河川の源流も存在し、豊かな水資源に恵まれていました。

村内を東西に横断する石川県道27号金沢井波線は、かつて「二俣越」と呼ばれ、古くから重要な交通路でした。特に戦国時代から江戸時代にかけては、金沢と越中（現在の富山県）を結ぶ最短ルートとして、人や物の往来を支える上で欠かせない道であり、歴史上重要な役割を担いました。この道の沿線には、戦国時代に加賀一向一揆の初期の拠点となった二つの本泉寺（若松本泉寺、現在も残るニ俣本泉寺）があり、当時の緊迫した歴史の一端を伝えています。

浅川村は自然豊かな地域であり、村内には医王山、戸室山、キゴ山、前山、黒瀑山といった山々や、横谷峠、見上峠、夕霧峠といった峠が存在します。また、かつては田上本町（現在の田上本町）に田上鉱泉という鉱泉旅館がありました。この鉱泉は皮膚病に効能があるとされ、多くの湯治客で賑わったといいます。しかし、金沢から湯涌温泉への道路が改修され、湯涌温泉へのアクセスが向上したことで客足が奪われ、次第に衰退しました。記録によれば、明治25年（1892年）頃まで経営されていたとされています。

現在の旧浅川村地域は、西側を中心に都市開発が進んでいます。金沢大学の本部キャンパスや北陸大学が置かれ、太陽が丘ニュータウン、鈴見台、田上団地といった大規模な住宅地が造成されるなど、新たなまちづくりが進められています。一方で、富山県境に近い山間部では人口減少が進み、無住地が存在するなど、過疎化という対照的な課題を抱えています。

歴史

浅川村は、明治時代に周辺の村が合併して成立しました。直接の前身となるのは、明治22年（1889年）4月1日に町村制が施行された際に発足した湯ノ谷村（ゆのたにむら）、金浦村（かなうらむら）、医王山村（いおうぜんむら）です。その後、明治40年（1907年）8月10日に、これら三つの村が合併し、新たに浅川村が誕生しました。

そして、昭和32年（1957年）4月5日、浅川村は隣接する金沢市に編入されることとなりました。編入にあたり、村内にあった22の大字は、一部が分割・合併・町名変更を経て、残りの21大字は金沢市の町名としてそのまま引き継がれました。

産業

かつての浅川村では、地域の豊かな自然資源を活かした産業が中心でした。特に薪や木炭の生産が盛んで、金沢をはじめとする周辺地域に供給されていました。また、「戸室石」として知られる石材の産出も多く、建築材などとして利用されていました。

教育

浅川村には、地域の子供たちのための教育機関が設けられていました。村立の小学校として医王山小学校、田上小学校、俵小学校があり、中学校としては医王山中学校、田上中学校、俵中学校が存在しました。これらの学校は、村の子供たちが学び育つ上で重要な役割を果たしました。

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