新建築

『新建築』：日本の建築界を牽引する専門誌

『新建築』は、日本の建築界において、長年にわたって重要な役割を果たしてきた建築専門の月刊誌です。株式会社新建築社が発行しており、1925年（大正14年）8月、吉岡保五郎氏によって大阪で創刊されました。以来、日本の建築文化の発展に大きく貢献し、今日まで建築業界の第一線で活躍し続けています。

建築ジャーナリズムの隆盛と変革

『新建築』は、創刊以来、建築設計、都市計画、建築史など、建築に関する幅広いテーマを扱ってきました。特に1950年代半ばには、当時編集長であった川添登氏のもとで「伝統論争」と呼ばれる活発な議論が展開され、日本の建築ジャーナリズムの確立に大きな貢献を果たしました。この時代は、戦後の日本の建築界が大きく変容していく時期と重なり、『新建築』はその変革の過程を克明に記録し、議論を喚起する役割を果たしました。

しかし、革新的な誌面作りは、必ずしも円滑な運営を約束するものではありませんでした。1957年8月号で掲載された村野藤吾設計の「有楽町そごう」に関する批評的な記事がきっかけとなり、「新建築問題」と呼ばれる騒動が発生。吉岡保五郎氏が編集部全員に解雇を通告するという事態に発展しました。この出来事は、日本の建築界に衝撃を与え、建築批評のあり方や雑誌編集の在り方について改めて考え直させる契機となりました。

姉妹誌『新建築住宅特集』

『新建築』誌内で年2回掲載されていた「住宅特集」は、1985年5月に独立し、季刊誌として生まれ変わりました。その後、1986年5月には月刊誌となり、現在に至っています。個人住宅を主に扱う『新建築住宅特集』は、『新建築』とは異なる内容を掲載し、互いに補完する関係にあります。建築家の視点だけでなく、住む人の視点も取り入れ、多様な住宅デザインを紹介することで、日本の住宅建築の進化に貢献しています。

建築設計競技と賞

新建築社は、『新建築』の名を冠する建築設計競技「新建築住宅設計競技」を、吉岡文庫育英会と共催しています。この競技会は、若手建築家の育成と優れた住宅デザインの発掘を目的としており、建築界の未来を担う人材の発掘に貢献しています。

また、吉岡文庫育英会が主催する吉岡賞は、『新建築住宅特集』及び『新建築』に掲載された住宅作品を対象とした住宅建築の新人賞です。2008年度から2012年度までは「新建築賞」という名称でしたが、その後「吉岡賞」と改称されました。この賞は、優れた住宅建築を表彰することで、日本の住宅建築全体のレベル向上に寄与しています。

『新建築』を彩った人物たち

『新建築』の歴史には、多くの建築評論家や編集者たちの貢献が刻まれています。川添登氏、宮内嘉久氏、馬場璋造氏、中谷正人氏など、著名な建築評論家たちが編集者として関わってきたことで、『新建築』は常に高いレベルの建築批評と情報を提供し続けました。彼らの建築に対する深い洞察と情熱が、今日の『新建築』の礎となっています。

建築界への継続的な貢献

『新建築』は、単なる建築専門誌にとどまらず、建築界全体の議論を活性化し、建築文化の発展に貢献してきた、日本の建築界にとってなくてはならない存在です。これからも、建築界の未来を担う新たな才能の発掘と育成、そして日本の建築文化の更なる発展に貢献していくことが期待されています。 オンラインでの情報提供も積極的に行い、デジタル時代における建築情報の伝達にも注力しています。 公式サイトである「新建築オンライン」や、掲載作品を閲覧できる「新建築データ」などのデジタルプラットフォームを通して、建築情報を幅広い層に発信し続けています。

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