浅草の灯

浅草の灯（あさくさのひ）

浜本浩による中編小説『浅草の灯』は、昭和初期の浅草を舞台にした作品で、様々なメディアで展開されました。

物語の概要

小説は1937年に「東京日日新聞」で連載され、同年には島津保次郎監督によって映画化されました。戦後には二度リメイクされており、1956年には田中重雄監督、1964年には斎藤武市監督によって新たな映画が制作されました。

1938年には、第1回新潮社文芸賞第二部大衆文芸賞を受賞。直木賞候補作「人間曲馬団」と合わせて単行本として新潮社から刊行され、後に続編も発表されました。

あらすじ

物語の舞台は、第一次世界大戦後、関東大震災直前の浅草オペラ。

架空の劇場「日本座」を中心に、スターである山上七郎と、彼を取り巻く人々の人間模様が描かれます。芸術協会から流れてきた佐々木紅光とその妻・松島摩梨枝は、「ボッカチオ」や「カルメン」といった演目を上演しています。佐々木紅光は、島村抱月と佐々紅華をモデルにした人物で、観客からの野次に耐えきれず、舞台を降りてしまいます。

浅草オペラに出入りする人々の中に、「ポカ長」というあだ名の神田長次郎がいます。彼は「ボッカチオ」をもじったあだ名で呼ばれていました。山上は浅草公園でポカ長と知り合い、一座の若手である小杉麗子の面倒を見てもらいます。麗子は、バー「トスキナ」に来る成金の半田耕平に言い寄られ、摩梨枝がお金を受け取ってしまいます。一方、ペラゴロの仲間である飛鳥井は肺病で亡くなり、若者たちは無常観を抱きます。一座の吉野紅子は山上に恋心を抱きますが、自身の境遇に悩みます。その後、香取は大阪へ、ポカ長は麗子と結ばれます。

映像化作品

『浅草の灯』は、これまで数々の映像作品が制作されてきました。

映画
1937年：島津保次郎監督
1956年：田中重雄監督
1964年：斎藤武市監督（『浅草の灯 踊子物語』）
テレビドラマ
1963年：テレビ朝日『シオノギ日本映画名作ドラマ』

作品が描くもの

『浅草の灯』は、昭和初期の浅草という場所で、夢を追う若者たちの姿を生き生きと描いています。浅草オペラという華やかな世界を舞台に、彼らの喜びや苦悩、恋愛模様が繰り広げられ、時代の空気感や人々の熱気を伝えてくれます。また、芸術と大衆、理想と現実の狭間で葛藤する人々の姿を通して、人間の普遍的な感情や生き方を問いかける作品とも言えるでしょう。

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