浅草東映

浅草東映

東京有数の繁華街、浅草にかつて灯りをともしていた東映系列の映画館、それが「浅草東映」です。正式名称は「浅草東映劇場」。台東区浅草2丁目14番2号という、浅草公園六区の一角に位置していました。

その敷地は、かつては浅草の名所として知られた12階建ての塔「凌雲閣」や、吉本興業が運営していた劇場「昭和座」（1927年開場、1943年建物疎開）が存在した歴史ある場所でした。

映画会社として設立間もない1951年頃、東映は高い集客力を持つ浅草への直営館進出を強く目論んでいました。当時の東京吉本社長、林弘高氏の仲介により、「十二階劇場株式会社」の株式を取得。その関連会社として、浅草東映劇場が誕生することになります。

建物は竹中工務店の施工で、1956年1月に着工。同年10月18日に華々しく開館しました。記念すべきこけら落とし作品として上映されたのは、東映製作の時代劇大作『曽我兄弟 富士の夜襲』でした。

開館当初は、1階のメインスクリーンが「浅草東映」として東映の新作邦画を封切り公開し、地下1階の「浅草東映ホール」では旧作などを上映する名画座として運営される、二つの異なる趣向を持つ劇場でした。しかし、時代の変化とともに館内構成も変化していきます。1965年には、1階「浅草東映」の2階席部分が改修され、新たなスクリーン「浅草東映パラス」が新設されました。

さらに複雑な変遷をたどったのは地下の劇場でした。地下の「東映ホール」は後に東映の手を離れ、日活の封切館「浅草日活」として営業されました。しかし、1991年に浅草の老舗映画館「浅草松竹映画劇場」（旧称：金龍館）が閉鎖・解体されるのに伴い、「浅草日活」はその名を引き継ぐ形で「浅草松竹」へと改称。松竹作品の封切館として運営されましたが、1999年には松竹が撤退しました。

松竹撤退後、地下1階は再び東映系列に戻り、「東映パラス」と名を改めました。これに伴い、以前からあった2階のスクリーンは「東映パラス2」となりました。最終的には、1階の「浅草東映」に加え、地下1階に「東映パラス」、2階に「東映パラス2」という、合計3スクリーンを持つ複合映画館として運営されました。

しかし、2000年代に入ると、映画を取り巻く環境は大きく変化します。近隣地域、特に錦糸町などに大型シネマコンプレックスが開業した影響は避けられず、集客に陰りが見え始めました。さらに、建物自体の老朽化も深刻な問題として立ちはだかります。こうした背景のもと、浅草東映はその約半世紀にわたる歴史に幕を下ろすことを決定しました。

2003年5月22日、最後に上映された作品は『魔界転生』でした。この作品の上映終了をもって、浅草東映はその長い歴史にピリオドを打ちました。

閉館後、建物は解体・改築され、しばらくはパチンコホール「サンシャイン浅草店」として使用されていました。現在（2022年3月以降）は、スーパーマーケットの「オーケー浅草店」が入居しており、かつて多くの映画ファンで賑わった映画館の面影はありません。

アクセスは、東武鉄道・東京都交通局の浅草駅や、東京メトロの田原町駅が最寄り駅でした（首都圏新都市鉄道の浅草駅は閉館当時は未開業です）。浅草の映画文化の一時代を築いた浅草東映は、今やその名を知る人の記憶と記録の中にのみ存在しています。

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