浅見淳之

浅見淳之（あさみ あつゆき）氏は、1959年に生まれた日本の農業経済学分野を代表する研究者の一人です。現在、京都大学大学院農学研究科の教授として教鞭を執るとともに、研究活動の第一線で活躍しています。農業経済学の発展に寄与する活動も精力的に行っており、地域農林経済学会や日本農業経済学会といった主要な学術団体の会長職を歴任し、そのリーダーシップを発揮してきました。その研究対象は、個別の農業経営から広範な農産物流通システム、そして農村経済の構造や制度に至るまで、多岐にわたります。

浅見氏の学術的なキャリアは、東京都で育ち、1982年に千葉大学園芸学部を卒業したことから始まります。さらなる研鑽を積むため、京都大学大学院農学研究科に進学し、1986年に博士課程を中途退学しました。同年に帯広畜産大学畜産学部の助手として研究者としての第一歩を踏み出します。その後、母校である京都大学に戻り、大学院農学研究科の生物資源経済学専攻で講師、准教授と段階を踏んで昇進し、現在の教授の地位に就きました。学術界における要職として、2020年には地域農林経済学会の会長を務め、続く2022年には日本農業経済学会の会長に就任するなど、日本の農業経済学研究を牽引する役割を果たしています。

浅見氏の研究成果は、多くの重要な著作として発表されています。特に、1989年に大明堂から出版された単著『農業経営・産地発展論』や、2015年に日本評論社から刊行された『農村の新制度経済学 : アジアと日本』は、農業経営体や産地の発展メカニズム、そして農村が直面する経済的な課題を制度的な視点から分析した著作として注目されています。また、農産物流通システムにも深く切り込んでおり、小林康平氏らとの共著による『変貌する農産物流通システム 卸売市場の国際比較』（1995年、農山漁村文化協会）では、卸売市場の機能や国内外の比較を通じて、流通の変化とその影響を詳細に論じています。

単著や共著に加え、浅見氏は研究テーマを深掘りするための書籍の編集にも数多く携わっています。2005年には辻井博氏、松田芳郎氏と共編著で『中国農家における公正と効率』（多賀出版）を刊行し、特定の地域の農業経済に関する詳細な分析を提供しました。さらに、歴史的な視点からの研究にも力を入れており、2011年には『戦前期の農家簿記と農林省農家経済調査 : 京大式簿記を中心に』（一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センター）を編集、そして2012年には稲本志良氏らと共編で『農業経営発展の会計学』（昭和堂）を出版するなど、農業経営の会計や歴史的変遷に関する貴重な研究成果を世に送り出しています。これらの編集・共編著からは、多岐にわたるテーマに対する関心と、他の研究者との共同作業を通じた学術的な交流の広さがうかがえます。

浅見氏の長年にわたる研究活動と学術界への貢献は、数多くの権威ある賞によって高く評価されています。研究者としてのキャリア初期にあたる1990年には、日本農業経済学会賞と北海道農業経済学会奨励賞を同時に受賞し、早くからその才能を認められました。その後も継続的に受賞を重ねており、1998年と2010年には地域農林経済学会および日本農業経済学会の学会誌賞を受賞し、発表論文の質の高さが評価されました。さらに、2013年には地域農林経済学会特別賞を受賞し、2016年には日本農業経済学会学術賞と日本フードシステム学会学術賞を同年に受賞するなど、その研究活動全体が広く認められています。これらの受賞歴は、浅見氏が日本の農業経済学研究において中心的な役割を果たし、その成果が学術界に大きな影響を与えていることの証と言えるでしょう。

浅見淳之氏は、教育、研究、学会活動を通じて、日本の農業・農村が直面する経済的な課題の解明と解決に向け、多大な貢献をしてきました。その研究の深さと広がりは、今後の農業経済学の発展においても重要な基盤となることが期待されています。

もう一度検索