浅野斉粛

浅野斉粛（あさの なりたか）：苦難の時代を生きた広島藩主

浅野斉粛は、江戸時代後期、安芸国広島藩の第9代藩主として、激動の時代を生きました。浅野家24代当主であり、官位は従四位上・安芸守、左近衛少将に叙せられました。

生涯

第8代藩主・浅野斉賢の長男として生まれた斉粛は、幼名を勝吉と名付けられました。初めは長粛（ながたか）と称していましたが、後に父と同様に、義父である徳川家斉から偏諱を授かり、斉粛と改名しました。文政6年（1823年）には、家斉の二十四女・末姫と縁組し、徳川家との関係を深めます。

天保2年（1831年）、父の隠居により家督を相続し、藩主となりました。翌年には従四位下・侍従・安芸守に任官し、順調な滑り出しを見せます。その後も昇進を重ね、天保7年（1837年）には左少将に任官、天保11年（1841年）には従四位上に昇進しました。

しかし、斉粛の治世は決して平穏なものではありませんでした。天保の大飢饉、河川の普請工事、将軍の姫との婚儀など、天災や事業、行事が重なり、藩の財政は逼迫。斉粛は、野村帯刀を登用して藩政改革に取り組みますが、十分な成果を上げるには至りませんでした。

天保6年（1835年）には、広島城の鬼門に位置する明星院に、浅野家の初代である浅野長政を祭神とする社を建立しました。この社は、明治6年（1873年）に県社となり、現在の饒津神社となっています。

安政5年（1858年）、斉粛は長男の慶熾に家督を譲り、隠居しました。隠居後は備後守と称しました。慶応4年（1868年）に52歳で死去。法号は温徳院殿寛洪日順大居士。墓所は広島県広島市の神田山墓地にあります。

人物・逸話

斉粛の時代は、天災や幕府からの要請による出費が重なり、藩財政は常に苦しい状況にありました。そのような状況下で、藩政改革を志した斉粛の苦悩は計り知れません。饒津神社の創建は、斉粛の信仰心の表れであるとともに、藩の安泰を願う気持ちの表れとも言えるでしょう。

系譜

父：浅野斉賢（1773-1831）
母：梅梢院（宮川氏）
正室：末姫（1817-1872） - 泰栄院、徳川家斉の二十四女
長女：八百姫 - 夭折
側室：妙信院（奥弥三兵衛典雅の娘）
長男：浅野慶熾（1836-1858）

浅野斉粛は、激動の時代に藩主として、藩のために尽力した人物として、その名をとどめています。

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