浜口義曠

浜口義曠の生涯

浜口義曠（はまぐち よしひろ）は、1933年9月2日、長崎県長崎市に生まれ、2021年8月31日に87歳で生涯を閉じました。東京大学法学部を卒業後、農林省（現：農林水産省）に入省し、農林水産官僚としてそのキャリアをスタートさせました。

コメ行政への情熱

浜口は、特にコメ行政において中心的な役割を果たしました。食糧庁長官時代には、食糧管理法に基づかない「自由米」の取り締まりを強化し、国内のコメ市場の安定化に尽力しました。また、国際食品・飲料展でのアメリカ産米の展示に対しては、食糧管理法違反として撤去を求めるなど、強い姿勢を示しました。浜口にとってコメは単なる食料ではなく、「小さな宗教のようなもの」という特別な存在であり、その保護に情熱を注ぎました。

ウルグアイ・ラウンドでの闘い

農林水産事務次官時代には、ウルグアイ・ラウンドにおけるコメの輸入自由化交渉において、ミニマム・アクセス導入に断固として反対しました。国際会議の場でも、日本のコメ自給を維持する立場を強く主張し、国内農業を守るために尽力しました。国内農政においては、農家の後継者不足などの課題に対応するため、食糧管理制度を含む包括的な見直しを進めました。

退官後の活動

農水省退職後は、生物系特定産業技術研究推進機構理事長を経て、日本中央競馬会（JRA）理事長に就任しました。JRAでは、障害競走の振興やクラシック競走への外国産馬の出走を可能にするなど、競馬界の発展に貢献しました。また、賞金・ボーナスの増額を通じて国内生産者を保護する政策も打ち出しました。JRA退職後も、農林中央金庫総合研究所理事長や日本穀物検定協会会長を歴任し、幅広い分野で活躍しました。

人物像

浜口は、その粘り強い交渉力と強固な信念で知られていました。上司の反対にも屈せず、自身の主張を貫く姿勢から、農水省内では「ナメクジセメダイン」という異名で呼ばれていました。また、貿易自由化交渉の閣僚会議では、日本に不利な議長試案に対し、唯一「受け入れ拒否」を表明するなど、剛直な一面も持ち合わせていました。

略歴

1957年 - 東京大学法学部第3類（政治コース）卒業
1958年 - 東京大学法学部第1類（私法コース）卒業後、農林省（現：農林水産省）入省
1975年04月 - 在中国日本大使館参事官
1975年07月 - 農林省構造改善局農政部構造改善事業課長
1978年01月 - 同省農林経済局金融課長
1978年07月 - 農林水産省経済局金融課長
1982年08月 - 同省大臣官房総務課長
1983年07月 - 同省大臣官房秘書課長
1984年11月 - 林野庁林政部長
1986年06月 - 農林水産省農蚕園芸局長
1988年01月 - 同省大臣官房長
1989年07月 - 食糧庁長官
1991年08月 - 農林水産事務次官（ - 1992年7月）
1993年06月 - 生物系特定産業技術研究推進機構理事長（ - 1996年5月）
1995年11月 - 文部科学省生涯学習審議会委員
1996年05月 - 日本中央競馬会理事長（ - 1999年9月）
1999年10月 - 農林中央金庫総合研究所理事長
2001年11月 - 日本穀物検定協会会長（ - 2009年8月）

論文等

「漁業権存続期間を2年延長―明春予定の漁業法改正を待ち、全面的切替え免許は38年度に(漁業権存続期間特例法) 」『時の法令』391、雅粒社、1961年。
「ケインズ理論への新しい視点」『金融市場』、農林中金総合研究所、2000年。
「プリシジョン・アグリカルチャー」『金融市場』、農林中金総合研究所、2000年。
「「情報格差の拡大」をめぐって」『金融市場』、農林中金総合研究所、2001年。
「金融のグローバル化と地域通貨」『金融市場』、農林中金総合研究所、2001年。
「農業生産における人間の積極性」『金融市場』、農林中金総合研究所、2002年。

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