浜安善駅

浜安善駅

浜安善駅（はまあんぜんえき）は、神奈川県横浜市鶴見区安善町にかつて存在した、日本国有鉄道（国鉄）鶴見線の貨物支線に属する鉄道駅でした。京浜工業地帯の臨海部に位置し、主に周辺の石油関連施設や在日米軍施設への物資輸送を担う重要な拠点として機能していましたが、1986年（昭和61年）11月1日にその役割を終え、廃止されました。開業当初は旅客営業も行っていましたが、早い段階で貨物専業駅となっています。

駅の概要と役割

浜安善駅は地上駅として建設されました。駅があった頃は、淡い水色の塗装が施された小さな駅舎が設けられており、駅が廃止された後も一時的に残されていましたが、2009年（平成21年）中に解体され、現在はその姿を見ることはできません。

この駅の最大の特長は、周辺の主要施設へ分岐する複数の専用線を有していたことです。具体的には、昭和シェル石油横浜事業所、エクソンモービル鶴見潤滑油工場、そして在日米軍鶴見貯油施設のエリアI・エリアIIへ向かう専用線が存在しました。これらの専用線を通じて、製油所や潤滑油工場からの製品出荷、あるいは軍用物資の輸送が行われていました。

特にエクソンモービルへの専用線は、浜安善駅廃止後もしばらく使用されており、2002年（平成14年）頃まで潤滑油の輸送に利用されていました。一方、在日米軍鶴見貯油施設に至る専用線は、現在も安善駅の構内側線扱いとして存続しており、定期的に石油製品の輸送が行われています。これは、浜安善駅と安善駅を結んでいた線路の一部が、駅廃止後も引き続いて使用されているためです。

歴史

浜安善駅は、元々は鶴見臨港鉄道によって建設されました。大正時代末期の1926年（大正15年）4月10日に、「石油駅」という名称で開業しました。開業当初から旅客および貨物の両方の取り扱いを行っていました。

しかし、京浜工業地帯の貨物輸送需要が増加するにつれて、駅の役割は貨物輸送に特化されていきます。開業から約12年後の1938年（昭和13年）12月25日には旅客の取り扱いが廃止され、純粋な貨物駅となりました。

太平洋戦争中の1943年（昭和18年）7月1日、鶴見臨港鉄道は国有化されることとなり、石油駅も国鉄の駅となります。この国有化と同時に、駅名は「浜安善駅」へと改称されました。以後、国鉄鶴見線の一部として、臨海部の産業・軍事施設への貨物輸送を担い続けました。

高度経済成長期を経て、日本の物流構造が変化し、鉄道貨物輸送、特に個別の工場や施設への専用線輸送の役割が相対的に低下していく中で、浜安善駅もその使命を終えることとなります。そして、国鉄の再編を目前にした1986年（昭和61年）11月1日、浜安善駅は廃止されました。

廃止後と周辺

駅施設は廃止とともに撤去されましたが、前述の通り、安善駅と浜安善駅を結んでいた線路の一部は、現在も在日米軍貯油施設への専用線として活用されており、安善駅の構内側線としてその存在意義を保っています。

駅が位置していた周辺地域は、現在も京浜工業地帯の中核をなしており、かつて専用線が分岐していた昭和シェル石油や、かつてエクソンモービルがあった場所（現在はENEOSの事業所など）のほか、現在も使用されている在日米軍鶴見貯油施設が広範囲にわたって立地しています。また、駅跡のすぐ近くには京浜運河があり、海上輸送との連携も可能な立地でした。駅の記憶は薄れつつありますが、近隣には横浜市営バスの「安善町」停留所があり、かつての駅所在地周辺へのアクセス手段となっています。

隣の駅

日本国有鉄道（国鉄）
鶴見線（貨物支線）
安善駅 - 浜安善駅（廃止）

安善駅は旅客営業も行っている現在の鶴見線の駅であり、浜安善駅は安善駅から分岐する形で位置していました。現在に至っています。

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