浜田政壮

浜田 政壮（はまだ まさたけ）は、元治元年（1864年）に日向国諸県郡、現在の宮崎市にあたる地域で生まれ、昭和12年（1937年）に72歳で死去しました。旧姓は池田で、明治から昭和初期にかけて、医師および政治家として宮崎県を中心に活動した人物です。

池田政順の二男として誕生しましたが、後に薩摩藩の郷士であった浜田戸太の養子となりました。少年時代は地元の宮崎学校で学び、その後、高鍋の儒学者・城竹窓に師事して漢学の素養を深めました。医学の道を志し、明治17年（1884年）には鹿児島県立医学校（現在の鹿児島大学医学部の源流の一つ）を卒業。さらに高度な医学を学ぶため上京し、当時の著名な医師、高木兼寛のもとで研鑽を積み、明治20年（1887年）3月に医術開業免許を取得しました。

医師となった政壮は、故郷である宮崎町（現在の宮崎市）に戻り、自身の医院を開業して地域医療に貢献を始めました。明治29年（1896年）には、伝染病研究所（現在の東京大学医科学研究所）の講習科を修了し、感染症に関する最新の知識を得ました。明治33年（1900年）には、有志と共に宮崎に総合病院を設立し、自身が外科部長を務めるなど、宮崎における近代的な医療体制の確立に尽力しました。

臨床医としての活動に加え、政壮は公衆衛生や医療行政分野でも重要な役割を果たしました。宮崎県薬舗試験委員や宮崎県連合医会議長、地方衛生会委員、宮崎県臨時検疫部検疫官などを歴任し、県の衛生環境改善や医療水準向上に大きく貢献しました。また、日本赤十字社の準備医員として、日露戦争時には従軍医師として中国大陸に渡り、営口軍政署で医官として傷病者の治療にあたりました。

医師としての実績を積み重ねる一方で、政壮は政治の世界にも関与するようになります。皮切りは宮崎町会議員としての活動でした。明治44年（1911年）には宮崎県会議員に当選し、その卓越した指導力からまもなく県会議長に選出されました。

さらに国政への進出を目指し、大正元年（1912年）5月に行われた第11回衆議院議員総選挙に、当時の宮崎県全県区から立憲政友会の公認候補として出馬し、見事当選を果たしました。これにより、彼は宮崎県の代表として国政の場で活躍する機会を得ましたが、衆議院議員としての在任期間は1期に留まりました。続く大正4年（1915年）3月の第12回総選挙では、無所属で立候補しましたが、落選という結果に終わりました。

政治活動が転機を迎えたのは、大正4年（1915年）に発覚した「大浦事件」への関与でした。これは選挙に関する贈収賄事件で、政壮もこれに関連して検挙されました。翌大正5年（1916年）6月、高松地方裁判所において、懲役3ヶ月、執行猶予3年、追徴金1100円の有罪判決を受けました。この判決により、彼は授与されていた勲六等と明治三十七八年従軍記章を剥奪されるという、重い処分を受けました。

政治家としてのキャリアに大きな傷がついた後、政壮は一時的に活躍の場を日本国外に移しました。台湾に渡り、再び医師として医療活動に従事しましたが、大正13年（1924年）には郷里の宮崎へ帰還しました。帰郷後、彼は政治の世界からは距離を置き、再び医療分野に専念します。宮崎県医学会長や宮崎県医師会長といった要職を務め、県の医療界における重鎮として指導的な役割を果たしました。また、日本赤十字社宮崎支部の看護婦養成所で教頭を務めるなど、後進の育成にも力を注ぎました。

浜田政壮は、近代化が進む激動の時代に、医師として宮崎の医療基盤整備や公衆衛生の向上に貢献する傍ら、政治家として地方から国政へと活躍の場を広げました。選挙違反事件による挫折という苦難も経験しましたが、晩年は再び医療の道に戻り、その豊富な知識と経験を郷土のために捧げた、波乱と貢献に満ちた生涯を送りました。

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