浦

浦（うら）とは

浦とは、湖や海が陸地に入り込んでいる地形のことです。海岸地形の一種であり、砂泥や小石で構成された平野である浜、岩が露出した磯とは区別されます。

歴史

前近代の浦

浦は、前近代においては漁村や港町といった集落を指す言葉としても用いられていました。

文献における初出は、『日本書紀』に記された「日本は浦安の国」という記述です。律令制下では、浦や浜は原則として排他的な利用が禁じられていましたが、実際には贄を献上する人々がおり、8世紀以降は権門寺社による私的な占有が進みました。平安時代には、漁業や塩業、水上交通などを中心とした荘園が形成され、浦は荘園内の単位として機能しました。また、有力住民は王家や神社の庇護を受け、地域を統制しました。

中世・近世の浦

南北朝時代以降は、守護による支配が広がり、塩業・漁業・水運が発展しました。各地の浦には漁村や港町が形成され、都市化する場所も現れました。戦国時代には、戦国大名によって水軍や海上輸送に動員され、水産物の供給を担いました。豊臣政権による水主役の導入は、浦方と村方を区別する重要な指標となり、漁業権に影響を与えました。しかし、鎖国などの影響により、浦の発展は制約を受けることになります。

近代の浦

江戸時代中期以降は、海産物の加工や肥料の生産が盛んになり、商品経済との結びつきを強めました。また、村方の漁業への進出や網元の成立など、浦の内部構造にも変化が見られました。明治維新後、浦は他の地域と同様に町村制に組み込まれ、新たな道を歩み始めました。

現在の浦

現在でも、浦は漁業や観光の拠点として、その名残をとどめています。国立歴史民俗博物館のデータベースによると、浦は陸前国、上総国、安房国、越後国、佐渡国、能登国、越前国、若狭国、近江国、伊勢国、紀伊国、淡路国、阿波国、讃岐国、伊予国、土佐国、出雲国、豊後国、肥前国、肥後国、対馬国などで多く確認できます。

浦は、日本の歴史や文化と深く結びついた地形であり、その変遷は日本の社会構造の変化を反映しています。

参考文献

網野善彦 「浦・浜」『国史大辞典』 第2巻、吉川弘文館、1980年
保立道久 「浦・浜」『日本史大事典』 第1巻、平凡社、1992年
春田直紀 「浦・浜」『日本歴史大事典』 第1巻、小学館、2001年

関連項目

海岸
御食国
入り江

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