鳳凰丸

鳳凰丸（ほうおうまる）の概要

鳳凰丸は、幕末日本において江戸幕府が建造した西洋式の帆船です。この船は、幕末期に日本で最初に完成した大型の洋式軍艦とされていますが、蒸気船の普及に伴い、実際には軍艦ではなく主に輸送船として使用されました。鳳凰とは、聖天子が国を治める際に現れるとされる神秘的な鳥であり、「鳳」は雄、「凰」は雌を指します。

建造の経緯

鳳凰丸の建造は、1853年に黒船来航がきっかけとなり、海防強化策の一環として決定されました。幕府の指示により浦賀奉行所での建造が進められ、水戸藩や薩摩藩でも他の艦船の建造が行われていました。この時期には大型洋式軍艦の建造が進められ、大型船の建造禁止令も解除されました。

浦賀奉行所は1826年から船の整備に取り組んでおり、1849年には初の和洋折衷の小型帆船が竣工しました。老中の阿部正弘の強い支持を受けて、鳳凰丸の建造が実現しました。建造は中心となる中島三郎助と多くのスループ造船技術に精通した隊員によって行われ、1854年に竣工しました。

構造

鳳凰丸は三檣バーク型で、前方の2本のマストに横帆、最後尾のマストに縦帆を装備しています。当初の設計はブリッグ型でしたが、建造途中で変更されました。船体は当初の設計より長くなり、外観は漆で赤く塗られ、船首には鳳凰の胸部像、船尾には鳳凰の尾が彫刻されていました。また、兵装としては大砲10門を装備し、近接戦闘用には洋式小銃も搭載されていました。

船体は伝統的な和製技法を用いた構造であり、肋材が少ないことは防弾性能に影響を及ぼしましたが、和船の工法を取り入れることで工期の短縮に寄与しました。

運用

1854年に竣工した鳳凰丸は、翌日に試験航海を行い、良好な結果を得ました。しかし、既に主流が蒸気船に移っていたため、鳳凰丸は主に輸送船として使用されることとなりました。1866年には大規模な修理が行われ、戊辰戦争では仙台藩に輸送船として貸し出され、その後明治政府に引き渡されました。

評価

鳳凰丸に対する評価は賛否があります。勝海舟などは外観が洋風であるだけで、実用性が無いと批判しましたが、近年の研究では鳳凰丸は堅固に造られた洋式船であったとの意見も出てきています。これにより、この艦船が日本の近代造船への道を開いた重要な存在であることが再評価されています。

結論

鳳凰丸は、幕末日本の海防強化の一環として建造された歴史的意義のある洋式軍艦であり、その成立過程や技術的特徴、運用実績において、日本海軍史に重要な足跡を残しました。

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