浪漫の夏

TUBEの13作目のオリジナルアルバム『浪漫の夏』は、1993年6月にリリースされました。このアルバムは、初回限定盤と通常盤の2形態で発売され、前作『納涼』から約1年ぶりのフルアルバムとなりました。作詞は前田亘輝、作曲は春畑道哉が担当し、TUBE自身がサウンドプロデュース、長戸大幸が総合プロデュースを手掛けています。

制作背景

アルバムのレコーディングは、前作に引き続きハワイのホノルルで行われました。これは、メンバーが日本でのスタジオ作業の過密スケジュールから解放され、リラックスした環境で制作に臨むためでした。このハワイでのレコーディングは、メンバーに精神的な余裕をもたらし、それがサウンドにも良い影響を与えたと語られています。

前作では様々な音楽性に挑戦しましたが、『浪漫の夏』では、TUBEらしいスタンダードなサウンドを追求しました。書籍『地球音楽ライブラリー チューブ 改訂版』では、本作を「TUBE Rediscover TUBE」と評し、TUBEの原点回帰とも言える内容であると述べています。

レコーディング

TUBEの楽曲制作は、まずメンバー間でアイデアを出し合い、春畑道哉が作曲を担当します。その後、各メンバーが楽器のパターンを練り、前田亘輝が歌詞を制作します。レコーディングはドラムから始まり、各楽器の音作りやアレンジをメンバー間で徹底的に話し合い、試行錯誤を繰り返しながら行われました。特に音にこだわりを持つ角野秀行は、妥協を許さず、納得いくまで作業を続けることで知られていました。ハワイでのレコーディングは、日本でのタイトなスケジュールから解放され、午前中は海で過ごし、午後からスタジオ入りするなど、メンバーに余裕を与えました。

音楽性と歌詞

本作は、TUBEのスタンダードな音楽性を追求した作品で、特に「抱きしめてAgain」や「夏を待ちきれなくて」は、「TUBE Rediscover TUBE」を象徴する楽曲として評価されています。歌詞についても、「Dream Forever」に込められた反骨精神や、「夢見る星屑」における前向きなメッセージが、TUBEの根底にある価値観を表していると分析されています。

また、本作では、小野塚晃、長戸大幸、小松久、伊藤一義といった、TUBEを支えるスタッフの存在が「＜5人目のTUBE＞」として重要視されています。彼らの支えがあってこそ、TUBEは「TUBE Rediscover TUBE」というコンセプトを具現化できたとされています。

音楽ライターの藤井徹貫は、本作の楽曲「浪漫の夏」を、ロックでありながらポップスでもあり、洋楽のようでありながら歌謡曲の要素も持つ、ジャンル分けが不可能な「最もJ-POPらしいJ-POP」であると評しました。

リリースとチャート成績

『浪漫の夏』は、1993年6月16日に初回限定盤、6月19日に通常盤が発売されました。初回限定盤にはCDキャリングケースとポストカードが付属し、通常盤はCD、CT、MDの3形態でリリースされました。キャッチフレーズは「みんな裸のOh! Summer」。

先行シングルとして「夏を待ちきれなくて」がリリースされた他、「浪漫の夏」は大成建設のコマーシャルソング、「夢のフロリダ」がフジテレビ系バラエティ番組のオープニングテーマとして使用されました。

オリコンアルバムチャートでは、初回限定盤が初登場から3週連続で1位を獲得し、通常盤も最高位1位を記録。総合での売り上げ枚数は100万枚を超え、ミリオンセラーとなりました。この成功により、『浪漫の夏』は1990年代におけるTUBEの代表作の一つとされています。

ツアー

アルバムリリース前には、ミニアルバム『Say Hello』を受けたツアー「TUBE LIVE AROUND '93 Say Hello」が開催され、その後、野外ライブツアー「TUBE LIVE AROUND SPECIAL '93 だって夏じゃない」が行われました。

この年のツアーでは、Jリーグの開幕の影響を受け、メンバーがサッカーのユニフォームを着用してステージに登場しました。また、コーラス担当の伊藤一義が、カスタネットの着ぐるみを着た「カスタネットマン」としてパフォーマンスを行ったほか、常磐ハワイアンセンターで習得した火を使ったパフォーマンスを披露するなど、ライブを盛り上げました。

収録曲

(収録曲リストは省略)

スタッフ・クレジット

(スタッフリストは省略)

このアルバムは、TUBEが自らの音楽性を再確認し、新たなステージへと進むための重要な作品となりました。

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