浮島沼

浮島沼について

浮島沼（うきしまぬま）は、静岡県沼津市と富士市にまたがる湿地帯に存在した一群の沼を指します。かつてこの地域には、須津地区を中心に、浮島地区や原地区に点在する大小の沼があり、これらは特に「浮島沼」として知られていました。代表的な沼としては、柏原沼や須津沼、富士沼、大沼、広沼などがあります。

これらの沼の周辺には浮島ヶ原と呼ばれる湿田やヨシ、マコモが生い茂る低湿地が広がっていました。中里地区にある「西の池」は須津湖として富士講の信仰にまつわる神聖な場所の一部であり、内八海の一つとしても数えられていました。しかし、江戸時代に入ると、地の変化により徐々に陸化が進み、内八海から除外されてしまいました。

この地域は海面との標高差が少いため、大雨や高潮により冠水しやすく、新たな農地の開発が難しかったのです。そのため、江戸時代には潮除堤が数多く築かれていましたが、これにより逆に排水が困難となり、洪水被害が増す結果にもつながりました。湿田農耕は昭和30年代まで続き、腰や胸まで水に浸かりながらの田植えが行われていました。このため、地域独自の農具であるナンバやオオアシ、タブネなどが発達しました。その技術の証として、浮島沼周辺の農耕生産用具152点は静岡県の有形民俗文化財に指定されています。

近年では、治水事業により浮島沼周辺の環境が整備され、以前の湿田は一般的な水田へと変わりつつあります。都市の発展に伴い、宅地や商業地、工場用地としての開発が進み、水田の面積は年々減少しています。また、浮島沼の地盤が弱いことから、東海道新幹線や東名高速道路はこの地域を避けて建設されました。浮島ヶ原の東西には沼川が流れており、地域の自然環境を支えています。

浮島沼の成立ち

浮島沼は、完新世初期には駿河湾の一部であったと考えられています。狩野川、富士川、愛鷹山から流れ出した砂礫が次第に堆積し、砂州を形成。これが潟湖として発展し、最終的には浮島ヶ原の湿地となりました。

名前の由来

「浮島」という名称は、鎌倉時代の文献「東関紀行」に由来しています。その中で、「昔、この原は海上に浮かんでいたため、浮島と名付けられた」と述べられています。

その他の情報

浮島沼には、かつて地域で起きた悲しい出来事を語る昔話「沼のばんばあ」が伝わっています。また、現在は沼津市により最終処分場や屎尿処理場が設けられ、富士市では「浮島ヶ原自然公園」や、自然の沼を活かした「浮島沼つり場公園」が整備されています。浮島沼には歴史的な出来事も多く、例えば、足利尊氏の子である竹若丸が幕府の追手に襲われたのもこの地域でした。なお、ここはかつて日本住血吸虫症が流行していた場所としても知られています。

関連項目

• - 浮島ヶ原自然公園
• - 浮島村 (静岡県)
• - 日本の湖沼一覧

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