浮石寺 (瑞山市)

浮石寺（ふせきじ）

韓国の忠清南道瑞山市に位置する仏教寺院です。正式名称は부석사（プソクサ）といい、現在では大韓仏教曹渓宗の第7教区に属し、修徳寺の末寺として活動しています。

歴史

創建当初は華厳宗の寺院であったと伝えられていますが、その後の歴史については不明瞭な点が多いです。李氏朝鮮王朝時代には、仏教が厳しく弾圧される時期がありました。特に、太宗が1407年に行った仏教寺院整理の際には、存続を許された88寺院の中に浮石寺の名前は含まれていません。さらに、世宗による1424年の寺院整理においても、存続が認められた36寺院にその名はありませんでした。これらの記録から、少なくとも15世紀の初頭には、浮石寺は既に廃寺となっていた可能性が高いとされています。

対馬仏像盗難問題との関連

2012年10月、日本の長崎県対馬市にある観音寺から、安置されていた観世音菩薩坐像が韓国人窃盗団によって盗み出されるという事件が発生しました。窃盗団は韓国国内で逮捕され、仏像は捜査当局によって押収・保護されました。

この仏像の胎内からは文書が発見され、そこには「高麗国瑞州浮石寺」や仏像が制作されたとされる「天暦三年」（西暦1330年）などの記述が含まれていました。

この記述を根拠として、浮石寺側は、この観世音菩薩坐像は本来、かつて浮石寺に安置されていたものであり、過去に日本側によって略奪されたものであると主張しました。そして、仏像が盗難品であることを理由に日本の観音寺への返還を阻止し、浮石寺へ返還されるべきであると求めました。この主張に対し、韓国の大田地方法院は、浮石寺の訴えを受け入れ、2013年2月26日に日本への仏像返還を差し止める仮処分を決定しました。

一方、仏像が盗み出された日本の対馬市では、市民の間で仏像の早期返還を求める運動が活発化しました。対馬市の人口のおよそ半数に相当する16,803人分の署名が集められるなど、大きな関心が寄せられています。

浮石寺は、仏像が倭寇によって略奪されたと主張していますが、その根拠となる具体的な資料、例えば鑑定書などについて問われた際には、「仏像を失った当時の悲しみを思い出すのが辛いため処分した」と説明しています。この仏像の所有権を巡る問題は、現在も継続中です。

関連項目

対馬仏像盗難事件
朝鮮の仏教#李氏朝鮮時代の仏教弾圧

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