海上自衛隊の礼式

海上自衛隊の礼式は、自衛隊の礼式に関する訓令と海上自衛隊礼式規則によって詳細に規定されています。これらの規則は、一般的な海軍の礼式に準拠しており、自衛官が任務を遂行する上で、礼儀と規律を重んじるための重要な要素です。

各個の敬礼

営門等の出入時、短艇の乗降時

海上自衛官は、営門や舷門を出入りする際、または短艇に乗降する際には、当直士官や警衛、短艇指揮官に対して敬礼を行います。また、外国艦船の舷門を出入りする場合には、当該艦船に掲げられた軍艦旗に対しても敬礼を行います。

上位者への報告時

上位者や上位相当者に報告を行う際には、報告の前後で敬礼を行います。これは、階級や職務上の立場を尊重する意識を表すものです。

賞状等授与時

室内で賞状などを受け取る際には、授与者から約3歩手前で停止し敬礼を行います。その後、賞状を受け取り、内容を確認してから、再度敬礼をして退去します。室外での授与の場合は、約6歩手前で停止し、同様の手順で敬礼を行います。

右手を挙げられない場合

両手に物を持っているなど、右手を挙げることができない場合には、脱帽時の敬礼の要領で敬礼を行います。臨機応変な対応が求められる状況でも、敬意を示すことが重要です。

敬礼の省略

制服を着用していない場合や、敬礼を受けるべき人物か確認できない場合には、敬礼を省略することができます。また、艦船内や建物内では、特定の時間帯を除き、同一中隊の上級海曹に対する敬礼を省略できる場合があります。ただし、礼式上特に必要とされる場合は、この限りではありません。

隊の敬礼

隊の敬礼は、陸海空自衛隊で共通のルールに従って行われます。訓練や作業、授業などの際には、指揮者や監督者のみが敬礼を行います。隊が敬礼を受けた場合には、その隊に対して答礼を行うことが原則です。ただし、音楽隊が行進中に演奏している場合は、指揮者のみが敬礼を行います。個人の敬礼を省略できる場合は、隊の敬礼でも同様に省略が可能です。

自衛艦の敬礼

自衛艦の敬礼の省略

自衛艦の敬礼は、日没から日の出までの時間帯や、演習中、乗組員全員での訓練時、出入港時など、安全確保が優先される状況では省略されることがあります。また、巡検後から総員起こしまでの間は、舷門堵列員の整列や号笛による礼式を省略するのが一般的です。部隊長の定める作業地では、指揮下の自衛艦同士の敬礼を省略することがあります。

自衛艦の敬礼の対象

自衛艦は、乗艦中の指揮官が上位者または同階級の先任者の自衛艦に対して敬礼を行います。また、内閣総理大臣旗などを掲げている自衛艦、または自衛隊旗章規則で上位の旗を掲げている自衛艦に対しても敬礼を行います。編隊をなす自衛艦に対する敬礼は、隊司令旗を掲げている自衛艦に対して行います。敬礼を受けた自衛艦は、答礼を行います。

自衛艦の敬礼の手順

敬礼を行う自衛艦は、らっぱや号笛で「気を付け」を令し、上甲板にいる幹部自衛官や准海尉は挙手の敬礼を、海曹・海士は姿勢を正す敬礼を行います。答礼を行う自衛艦は、最高指揮官が挙手の敬礼を行い、その他の自衛官は姿勢を正す敬礼を行います。

自衛艦の敬礼の始期と終期

敬礼の開始は、敬礼を行う自衛艦の艦首または艦尾が、敬礼を受ける自衛艦の艦首または艦尾を通過する時点からとします。答礼が終わるまで敬礼は継続されますが、距離や状況に応じて開始時期を調整することが可能です。

旗章を掲げた短艇への敬礼

内閣総理大臣旗などを掲げた短艇と行き合った場合には、自衛艦は短艇に対して敬礼を行います。

登舷の敬礼

天皇旗を掲げた自衛艦や観閲官が乗艦する自衛艦に対しては、登舷の敬礼を行います。遠洋航海に出航する自衛艦を見送る際にも同様の敬礼が行われます。「登り方用意」「登れ」の号令で乗員が舷側に整列し、礼装を着用します。幹部自衛官や准海尉は挙手の敬礼を行い、海曹・海士は姿勢を正す敬礼を行います。敬礼の開始と終了は、自衛艦との位置関係によって調整されます。

自衛艦旗を半下して行う答礼

自衛隊以外の船舶や灯台などから国旗を半下して敬礼を受けた場合には、自衛艦旗を半下して答礼を行います。半旗掲揚中の場合は、一旦全揚してから半下し、答礼後に再度全揚して半旗に戻します。

自衛艦旗の掲揚・降下時の敬礼

自衛艦では、定時に自衛艦旗を掲揚または降下する際に、国歌を奏でます。この間、当直士官は自衛艦旗に対して挙手の敬礼を行い、他の乗員はそれぞれの場所で敬礼を行います。陸上にいる自衛官も、自衛艦旗の掲揚・降下を目撃した際は、敬礼を行う必要があります。

自衛艦を出入りする者に対する敬礼

幹部自衛官などが自衛艦を出入りする際には、送迎のほか、特定の礼式を行います。送迎では、幹部自衛官や准海尉は挙手の敬礼を行い、海曹や海士は姿勢を正す敬礼を行います。陸上自衛官や航空自衛官が自衛艦を出入りする際には、その階級に応じて準用されますが、舷門堵列員の整列や号笛による礼式は省略されます。

短艇の敬礼

短艇は、天皇や国旗などに対して、機走中の場合は停止し、とう走中の場合は櫂を立て、帆走中の場合は総帆を下げ、ろ走中の場合はろを上げて敬礼を行います。ただし、安全上の理由からこれらの動作が難しい場合は、敬礼のみを行います。

短艇を出入りする者に対する敬礼

短艇指揮官は、短艇を出入りする上位者に対して敬礼を行います。また、同階級の場合は相互に敬礼を行います。

短艇に対する敬礼

短艇は、他の短艇から敬礼を受けた場合には答礼を行います。敬礼の開始と終了は、短艇間の距離によって調整されます。

短艇の答礼

短艇は、自衛艦から敬礼を受けた場合には答礼を行います。

交通船及び機動船以外の支援船の敬礼

交通船や機動船以外の支援船の敬礼は、自衛艦の敬礼や短艇の敬礼に準じて行われます。

その他の礼式

陸上の部隊等を出入りする者に対する敬礼

陸上の部隊等を出入りする受礼者に対しては、庁舎玄関で送迎を行います。この際、舷門堵列員の整列や号笛による礼式は行わず、当直士官による送迎は、当直中の場合に限ります。航空基地に到着・出発する訪問者には、海将補以上の幹部や部隊長の場合に限り、航空機の発着場所で送迎を行います。

上位者との同行

上位者と同行する際は、特別な場合を除き、上位者の左側または後方につくのが一般的です。

舷梯の昇降

舷梯を昇る際や短艇から陸地に上がる際は、上位者を先に行かせ、舷梯を降りる際や陸地から短艇に乗る際は、下位者を先に行かせます。

短艇内の席順

短艇内では、通常、艇尾に近い席の中央が上席とされ、艇首に向かって席順が下になります。

車両の乗降

乗用車などの小型車両に乗る場合は、上級者を先に乗せ、降車時は下位者を先にします。ジープやバスなどの大型車両に乗る場合は、下位者を先にし、降車時は上級者を先にします。

自衛艦旗授与式

自衛艦旗授与式は、自衛艦旗の授与、乗組員の乗艦、自衛艦旗掲揚、訓示など、定められた手順で行われます。式典の儀礼曲には『海のさきもり』が用いられます。

観閲式

観閲式は、観閲官の臨場、栄誉礼、観閲指揮官の申告、巡閲、観閲行進などの手順で行われます。観閲官に対する敬礼は、中隊ごとに行われるのが一般的です。

葬送式

葬送式は、自衛艦または陸上で行われ、儀仗隊による敬礼、弔銃の発射、音楽隊による演奏などが行われます。儀仗隊の編成が困難な場合や、式場の所在地が遠隔地の場合は、礼式を省略できます。

着任の場合の礼式

着任時には、原則として第1種礼装で着任の挨拶を行います。艦長の着任時には、送迎のための整列、号笛の吹鳴、舷門堵列員による敬礼などが行われます。着任式では、着任者に対して、指揮監督を受ける者が挨拶を行います。

栄誉礼

栄誉礼は、儀式会場や自衛艦の露天甲板、陸上部隊の庁舎前などで行われます。外国の高官に対して栄誉礼を行う場合には、音楽隊による奏楽が行われます。音楽隊の編成が難しい場合は、らっぱ隊による代用も可能です。

登舷礼

艦の出航時には、見送る隊員が互いに正帽を振る「帽振れ」が行われます。これは、帽子を右手で持ち、頭上で回す動作です。

用いられる旗章

(記載なし)

脚注

(記載なし)

海上自衛隊の礼式