海峡を渡るバイオリン

海峡を渡るバイオリン

『海峡を渡るバイオリン』は、在日韓国人であり、ヴァイオリン職人として世界的に認められた陳昌鉉（チン・チャンヒョン）の人生を描いた作品です。この物語は、彼の口述を元に鬼塚忠と岡山徹が小説として書き起こした書籍と、それを原作としたテレビドラマの2つの形態で展開されています。フジテレビ開局45周年記念ドラマとして放送されたテレビドラマは、草彅剛が主演を務め、感動的なストーリーが話題を呼びました。

作品概要

陳昌鉉は、「東洋のストラディバリ」とも称されるほどのヴァイオリン製作の名工です。彼は世界でわずか5人しかいない「無監査マスターメーカー」の一人として認定されています。彼の半生を描いた書籍は、2002年9月に河出書房新社から単行本として出版され、2007年10月には河出文庫から文庫版が発売されました。

テレビドラマは2004年11月27日にフジテレビ系列で放送され、その後DVD化もされています。書籍版は口述筆記によるノン[[フィクション]]ですが、テレビドラマ版は書籍を基にしたフィクションであり、ドラマとしてのエンターテイメント性を高めるために様々な脚色が加えられています。

テレビドラマ版のあらすじ

物語は、日韓併合下の朝鮮半島で始まります。幼い昌鉉は、流しの薬売りの奏でるヴァイオリンの音色に心を奪われます。やがて、太平洋戦争の時代、彼は日本から来た教師・相川と出会い、ヴァイオリンを通じて美しさを学びます。しかし、戦争は彼らの運命を翻弄し、相川は戦地へ、昌鉉は父の死と家の没落を経験します。教師を目指して日本へ渡った昌鉉を待っていたのは、敗戦と故郷との断絶でした。

絶望の中、ヴァイオリン職人になることを決意した昌鉉は、貧困と差別に苦しみながらも、古道具屋の娘・南伊子との出会いを経て、医師・丸山の知遇を得ます。丸山のアドバイスでヴァイオリンを完成させた昌鉉は、篠崎弘嗣との出会いによって才能を認められ、生活は安定していきます。しかし、理想を追求するあまり、彼は安定した収入を捨て、更なる高みを目指します。そんな中、韓国との国交が回復し、母からの手紙が届きますが、母は彼の志が達成されるまで帰国を許しません。

理想を追い求めるあまり家庭を顧みなくなった昌鉉は、ついに家族を кризис кризисに陥らせてしまいます。しかし、南伊子の勧めで一時帰国した昌鉉は、母との再会を通して自らの原点を見つめ直し、相川の教えの真の意味を悟ります。そして、彼はアメリカで行われる弦楽器製作者コンクールで、自身の人生の全てをかけて製作したヴァイオリンで人々の心を掴み、成功を収めるのです。

キャスト

陳昌鉉：草彅剛
南伊子（昌鉉の妻）：菅野美穂
相川先生：オダギリジョー
丸山医師：田中邦衛
陳在基（昌鉉の父）：チョン・ドンファン
千大善（昌鉉の母）：田中裕子
篠崎弘嗣：石坂浩二

スタッフ

企画：山田良明
演出：杉田成道
脚本：池端俊策、神山由美子
主題歌：中島みゆき「二隻の舟」
音楽：岩代太郎

受賞

2004年 第59回 日本 文化庁芸術祭出品作 優秀賞
2006年 第1回 韓国 ソウル・ドラマアワーズ 短編ドラマ部門 最優秀作品賞、音楽監督賞

『海峡を渡るバイオリン』は、一人のヴァイオリン職人の波乱万丈な人生を通して、音楽への情熱、家族との絆、そして国境を越えた人間愛を描いた感動的な作品です。

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