海洋考古学

海洋考古学とは

海洋考古学（かいようこうこがく）は、考古学の一分野であり、特に水中に存在する文化遺産を研究対象としています。この学問は、国際連合教育科学文化機関（ユネスコ）が提唱する水中文化遺産保護条約に基づき、水中にある歴史的・文化的なものを対象にしています。また、一般的には「水中考古学」とも呼ばれ、近年では「水中文化遺産研究」としても言及されることがあります。

海洋考古学の目的

この学問の主な目的は、水中文化遺産を通じて、人類が海洋環境にどのように適応してきたのかを、歴史的な脈絡の中で明らかにすることです。例えば、沈没船や古代の海底[[遺跡]]を調査することで、当時の文化や技術、また人々の日常生活を再構成していきます。海洋考古学は、世界的な視野で海洋文化の理解を深めようとする学問です。

水中文化遺産

日本では水中遺跡や海底[[遺跡]]とも称されますが、国際的には「水中文化遺産」として統一されています。この遺産には、文化的または考古学的に価値のある痕跡が含まれ、以下の三つのカテゴリに分けられます：

1. 遺跡や建造物：地震によって沈んだポート・ロイヤルやヘラクレイオンなどの遺跡が該当します。
2. 沈没船やその積荷：トレジャーハンターの被害に遭いやすい沈没船などが含まれます。
3. 先史的遺物：アルプス山脈の杭上住居群など、古代の生活踪を示すものです。

海洋考古学の関連分野

海洋考古学には海事考古学という関連する分野があり、こちらは主にイギリスで使われています。海事考古学は、水中遺産だけでなく、陸上における文化遺物も対象とし、より広範な海事に関連する遺物について考察します。一般には、海洋考古学が理論的背景を持ち、水中考古学はその実践的側面を指すとも言われています。

海洋考古学の方法論

この学問を進めるにあたり、海洋考古学独自の手法があるわけではありません。陸上の考古学と同様の手法を用いて水中遺産を調査します。水中文化遺産保護条約は遺産の原位置保存を推奨しています。遺物を移動したり引き揚げたりすることは原則として避けるべきですが、破壊が迫っている場合には保存行動が求められます。特に水没している遺産には、ダイビング技術が必要となります。

保存処理

水中文化遺産は、長期間水中にあったため、大気に触れるとすぐに劣化が始まります。このため、引き揚げた際には専用の処理が必要です。最初に真水に浸し、その後、素材に応じた化学的処理を施すことが求められ、これは数年間から数十年にわたる場合もあります。

海洋考古学の歴史

海洋考古学の歴史は久しく、17世紀には潜水鐘、19世紀にはヘルメット潜水による遺物引き揚げが行われました。しかし、本格的な海洋考古学は1943年のジャック＝イヴ・クストーのスクーバダイビング技術の発明から始まりました。「水中考古学の父」として知られるジョージ・バスは1960年から地中海の沈没船の調査を実施しました。

日本では、1877年の大森貝塚の発掘から海洋考古学が始まりました。「日本の水中考古学の父」とされる小江慶雄は1959年から琵琶湖の調査を行いました。1970年代には開陽丸の調査が始まり、さらに鷹島神崎遺跡の調査などが行われました。近年では、全国的な水中文化遺産の調査が進んでおり、文化遺産の保護と理解が深まっています。

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