ポート・ロイヤル

ポート・ロイヤル：カリブ海の栄光と没落の港町

ポート・ロイヤルは、かつてジャマイカの海運業の中心地として栄華を誇った港町です。現在の首都キングストンの沖合に位置し、その戦略的な立地からカリブ海貿易において重要な役割を果たしました。

カリブ海の要衝

ジャマイカは、パナマ地峡やキューバなどの中間地点に位置し、カリブ海交易にとって理想的な場所にありました。1655年、イングランドがスペインとの小競り合いの中でポート・ロイヤル湾の入り口にある要塞を奪取し、入植を開始。1670年のマドリード条約でスペインがイングランドのジャマイカ支配を正式に認めるまで、この地は紛争の火種を抱えていました。

海賊の楽園

当時のジャマイカ総督トマス・モディフォードは、脆弱な防衛力を補うため、バッカニア（私掠免許を得た海賊）に私掠免許を与え、ポート・ロイヤルを拠点とすることを奨励しました。ヘンリー・モーガンはその中でも特に有名なバッカニアで、後にジャマイカ副総督にまで上り詰めています。ポート・ロイヤルは、海賊たちが略奪品を持ち寄り、消費する場所として発展し、「世界で最も豊かで最も悪名高い町」として知られるようになりました。

繁栄と衰退

マドリード条約締結後、公式にはスペイン船への略奪が禁じられ、海賊行為は取り締まられるようになり、バッカニアは徐々に衰退していきました。しかし、ポート・ロイヤルの繁栄は長くは続きませんでした。1692年6月7日に発生した大地震により、街は壊滅的な被害を受け、その3分の2が海に沈んでしまったのです（ジャマイカ大地震）。この大惨事の後、商業の中心地はキングストンへと移されました。

水没した街の遺産

現在、ポート・ロイヤルの沈没船からは、中国の財宝など当時の繁栄を物語る遺物が発見されており、その歴史が徐々に解明されつつあります。また、ポート・ロイヤル一帯には、キー、砂洲、マングローブ、ラグーン、島嶼、サンゴ礁、海草藻場、浅瀬など多様な地形が広がっており、アメリカワニ、アオウミガメ、タイマイ、アメリカマナティー、ハンドウイルカなど、多様な生物が生息しています。2005年にはラムサール条約登録地にも指定されています。

ポップカルチャーにおけるポート・ロイヤル

ポート・ロイヤルは、ウォルト・ディズニー製作の映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち|パイレーツ・オブ・カリビアン_呪われた海賊たち』（2003年）の始まりの場所としても知られています。この映画を通じて、ポート・ロイヤルの名は広く世界に知られることとなりました。

ポート・ロイヤルは、カリブ海の歴史において、栄光と没落を象徴する港町です。その短いながらも劇的な歴史は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

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